第1章

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 池で亀をやっていますん。 仕事と簡単にいっても、職業と労働と物理的な 運動の云々とかは違うわけですん。  そんで、アタクシは池で亀をやっていますん。 営んでいるわけではないんですん。 えっと、ちょいっとカメラをひいてくださいな。  ほらね、判るでがしょ? ここは神社の境内の一角なんですん。  但し、弁財天様のお邪魔はしない。 お約束なんですん。  じゃあ、少しだけ左へ そうそう、あの橋の横辺りをご覧下さいません。  鯉の皆さんが、黒やら赤やら金やら白やら 眩しいで御座いましょう。 だからってね、神様の御威光でって訳でも ああ、人様によっては太陽の光浴びてと言えば まぁなんでもようござんすねん。 ようござんすが。  アタクシらは亀ってのはね 鶴より10倍程、長寿なんて言われちゃいますけど。 まぁ、人それぞれ。 でもないんですんか、亀それぞれですん。  そそれ、そおれそれ、それそれ、ジャブン。 潜れば暑さ忘れますん。  鯉の皆さんも別に食事に困ってるってわけじゃないんですん。 あちらは、ああいうお仕事ですん。 職業なのか運動なのか、そこはアタクシにゃわかりませんがね。  ここは随分と、古くからある池なんで御座いましょうねえ。 創建千数百年とか。  そういう杉だか榎だかアタクシは 万年生きる亀のクセに見たこた御座いません。 興味ないですし、池より涼しくない気がするんで。  ただねぇ、そのわりには まぁ狭い池で御座いましょう。 あなた様は本殿を参拝なさりましたんで? 皆さん言いなさるんですん。  大きく立派な境内に、大きく立派なお社だとか。 アタクシは神さん仏さんと違いますからね。 大きな池でなくて、よろしゅう御座いますん。  ただねぇ。苔が最近、苦いのは 暑さ寒さより、景気不景気よりも 参拝に来られるん、お人が減った気がするんですん。  でも、横の長?い、稲荷さまの鳥居、潜られましたん? 少し涼しかったとは思いなさんですか。  アタクシたちもね、涼しいから石の上に眠ってるってぇ 仕事ではありゃしないんですん。 皆様が潜った何かの影のようなもんですん。  秋になったらまた来んさいな。 おまえさんかて、どこに行っても同じおまへん?  道は種類がありましてな。 人様が器用に利用されてはる街道。 獣が使う独自の技で作り出す獣道。  そんで  あんさんがまだ通行していない道 道と認識していない道がありますのん。
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