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【大和side】
………こわくない……と言ったら、ウソになる…
今も気をぬいたら、きっと足がふるえて立っていられない…
「本当に、可愛い気のない子供だね。もっと泣き喚いてくれた方が、こっちは面白いんだがね…もう、刀は降ろしていい。いつまでも、血をそのままにしてたら錆びるぞ?」
刀を持った男がはなれ、日下部が私の前に立つ。
ここで私が泣きわめいたら、朔也様が…
これ以上、朔也様を不安にさせたくない。
「日下部様…あなたに、聞きたい事があります。なぜ、このような事を…?朔也様を、どうなさるおつもりなのですか?」
「……………君は、本当に7歳なのか?どうするも何も、朔也君はあの極悪非道の男を誘き出す餌なのだ。あの男がここに来るまでは、生かしておくつもりだよ。どうだい?安心したかな?」
おびき出すえさ…
安心なんて、できるわけない。
「1つ目の質問に答えてもらってません。なぜ、このような事を?」
「あ~!イラつく!マジで全っ然可愛くねぇ!話なんてまどろっこしい事してねぇで、早いとこ殺っちまおうぜ!」
刀の手入れをしていた男が、私を指さしてどなっている。
その声を、どこか他人事のように聞いていた。
日下部が朔也様をえさと言った時ぐらいから、遠くでサイレンの音がする。
きっと、ここに向かっている。
日下部も男2人も、まだ気づいていない。
「まあ待て。こんな事した理由はね、美空 隆臣が俺から全てを奪ったからだ。あの男…俺が必死で守ってきた会社を、あっさりと見限りやがった!あまつさえ、会社を倒産させて社員を路頭に迷わせたのだ!だからこそ、今度はこっちがあの男の全てを奪ってやる!目の前で、跡継ぎである朔也君を殺したら…あの男の絶望する様が目に浮かぶわ!」
くるっている…
とても、正気とは思えない…
朔也様の方を見ると、日下部の話を聞いてまたなみだを流していた。
「ご……ごめ………い……ッ…く……ごめんなさい…」
泣きながらあやまる朔也様を見て、部屋の中がしずかになった。
聞こえるのは、近づいてきたサイレンの音…
「おい、日下部さん。アンタが呑気に話してるから、警察来ちまったぜ。ガキを生け捕りにしたら、アンタが恨んでる男が助けにくんじゃなかったのかよ?」
………何も分かっていない。
あの御前様が、何の用意もしないで1人で来るわけがない。
朔也様だけでも、無事に助け出してほしい…
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