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ーーーーー……………
連れて行かれる日下部を、その場にいる全員が見つめてる。
「………なぁ、お前…大和って言ったっけ?」
名前をよばれてふり向くと、刀をふり回していた時とは顔つきがまったくちがう男がそこにいた。
「……はい」
なぜだろう…
父上を殺した、ニクいはずの男なのに…今、私の頭の中にはこの男をうらむというかんがえはなかった。
子どものころの話を、聞いたからだろうか…?
いや、ちがう…
きっと、この人達と私は…
「………やっぱり、俺達は同類みたいだな。だからこそ、散々『殺す』と言いながらも実行出来なかった…お前の目は、俺達と同じ…お前なら、俺達の気持ちが分かるだろ?」
同類…
気持ち…
「……?やまと…お兄ちゃん?どうしたの?」
……ッ…!
朔也様のお言葉で、だきしめたままだった事に気づいた。
「もうしわけございません…どこか、苦しかったりはしませんか?」
「うん、だいじょうぶ………あの!やまとお兄ちゃんが、あなたたちの気持ちわかるって…どういうイミ?」
いきおいよくふり返った朔也様の目に、死体がうつる事はない。
おなかをうたれて死んだ男は、タンカにのせられてブルーシートがかけられている。
あとは、はこび出すだけだった…
「御子息様の『やまとお兄ちゃん』は、大切な御子息様の為ならどんな事でもするって意味だよ。大和…俺達は結局、日下部の旦那の役には立てなかった…お前は、間違えるなよ?」
私のかんがえが正しいのなら、この2人は…
「だれかに止めてほしかったのですか?自分達では、日下部を止められないから…自分達がだれかに殺されてでも、日下部に目をさましてほしかった…ちがいますか?」
「ご名答…日下部の旦那に発破かけたり、色々してみたが効果なくてさ…最後の最後で、昔話してみたらあっさり上手くいくって…何でもっと早くに、気付かなかったんだろうな…なんか、お前も俺達と同じ道歩む気がする…主の命令に絶対服従なのは、構わない。だけど…目を覚まさせたいなら、それを《他の誰か》じゃなく……(カリッ…!)……ゴホッ!!……主も自分も…信頼する者を…えら…べ…」
ーーードサッ…!!
いきなり血をはいた男に、けいさつの人がかけよって行く。
「……奥歯に、毒を仕込んでいたようです…先に死んだ男の口の中にも、似たような物がありました…おそらく、同じ物でしょう。まさか、最初から死ぬつもりで…」
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