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――5年後・夏…
【朔也side】
おへやのそとまで、お父さまのおこってる声が聞こえてくる。
「奴の会社を潰せ!徹底的にな!」
心ぞうが、バクバクなりだした。
ここにいてはダメだってわかっているのに、カラダがこの場所からうごかない。
――ガラッ…!
らんぼうに開けられたフスマのむこうには、こわいお顔のお父さまがいた。
「……お父…さま…」
さっきのはウソだって、言ってほしかった。
「何故、ここにいる?高木!何をしている!さっさと、連れて行け!」
「申し訳ございません。すぐに…」
お父さまのおコトバのあとすぐに、1人の男の人がおヘやから出てきた。
その人にだっこされそうになるのをイヤがって、お父さまの前に行く。
「どうして?どうして、あの人の会社をツブすの?」
ボクを見ているお父さまの目は、つめたくてこわかった。
「朔也…よく覚えておけ。これが、この家に逆らった者の末路だ」
マツロ…?
イミはわからないけど、きっといいイミじゃない…
「……お父さまは、この家のことしか…かんがえてないの?」
にぎっていた手が、いつの間にかふるえていた。
この時はまだ、しんじていたのに…
「分かっている事を聞くな。我が家系は、由緒正しい家柄。その家督を継いだ時から、敗北は許されぬ事なのだ。俺の父親も、そうやって俺を育ててきたんだ」
ウソだ…ウソだ!
あのやさしいオジイさまは、こんなことしない!
「……しんじない…」
しんじられない…
「それは、お前の勝手だが…真実を知りたくば、直接本人に聞いてみろ。……連れて行け」
「御意」
男の人にだっこされて、お父さまのおへやからはなれた。
「ねぇ、お父さまが言ってたことは…本当なの?」
【きょういくがかり】のこの人なら、何かしってるかも…
「私の口から、申し上げる事は出来ません。御前様の仰られた通り、直接御隠居様に聞かれるのが一番かと思います」
オジイさまに聞けないから、今あなたに聞いてるんじゃないか…
「……ここでいい。おろして」
オモヤ(母屋)からハナレ(離れ)にいくロウカに、ゆっくりとおりた。
「朔也様!どちらへ、行かれていたのですか!?」
「やまとお兄ちゃん!」
はしってきたやまとお兄ちゃんが、ふしぎそうにボクの顔を見る。
「父上…?何かあったのですか?」
やまとお兄ちゃんはなきそうなボクのことを、つれてきた男の人に聞いた。
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