第1章 はじまりの子《幼少編》

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――5年後・夏… 【朔也side】 おへやのそとまで、お父さまのおこってる声が聞こえてくる。 「奴の会社を潰せ!徹底的にな!」 心ぞうが、バクバクなりだした。 ここにいてはダメだってわかっているのに、カラダがこの場所からうごかない。 ――ガラッ…! らんぼうに開けられたフスマのむこうには、こわいお顔のお父さまがいた。 「……お父…さま…」 さっきのはウソだって、言ってほしかった。 「何故、ここにいる?高木!何をしている!さっさと、連れて行け!」 「申し訳ございません。すぐに…」 お父さまのおコトバのあとすぐに、1人の男の人がおヘやから出てきた。 その人にだっこされそうになるのをイヤがって、お父さまの前に行く。 「どうして?どうして、あの人の会社をツブすの?」 ボクを見ているお父さまの目は、つめたくてこわかった。 「朔也…よく覚えておけ。これが、この家に逆らった者の末路だ」 マツロ…? イミはわからないけど、きっといいイミじゃない… 「……お父さまは、この家のことしか…かんがえてないの?」 にぎっていた手が、いつの間にかふるえていた。 この時はまだ、しんじていたのに… 「分かっている事を聞くな。我が家系は、由緒正しい家柄。その家督を継いだ時から、敗北は許されぬ事なのだ。俺の父親も、そうやって俺を育ててきたんだ」 ウソだ…ウソだ! あのやさしいオジイさまは、こんなことしない! 「……しんじない…」 しんじられない… 「それは、お前の勝手だが…真実を知りたくば、直接本人に聞いてみろ。……連れて行け」 「御意」 男の人にだっこされて、お父さまのおへやからはなれた。 「ねぇ、お父さまが言ってたことは…本当なの?」 【きょういくがかり】のこの人なら、何かしってるかも… 「私の口から、申し上げる事は出来ません。御前様の仰られた通り、直接御隠居様に聞かれるのが一番かと思います」 オジイさまに聞けないから、今あなたに聞いてるんじゃないか… 「……ここでいい。おろして」 オモヤ(母屋)からハナレ(離れ)にいくロウカに、ゆっくりとおりた。 「朔也様!どちらへ、行かれていたのですか!?」 「やまとお兄ちゃん!」 はしってきたやまとお兄ちゃんが、ふしぎそうにボクの顔を見る。 「父上…?何かあったのですか?」 やまとお兄ちゃんはなきそうなボクのことを、つれてきた男の人に聞いた。
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