第1章 はじまりの子《幼少編》

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「………」 「朔也、何やら納得がいかないという表情をしているな。これは、決定事項だ。お前が異を唱えた所で、何も覆らん」 けっていじこうって… ボクが言いたいのは、そんなことじゃない! 「……まだ、ジケンがおこってから…みんながしんじゃってから、まだ2時間半しかたってないのに!どうして、カンタンにつぎをきめれるの!?すこしくらい…かなしむ時間くれたって……ッ…!」 ボクを見るお父さまの目がこわくて、コトバが出なくなった。 「悲しんで、どうなると言うんだ?泣いて死んだ者達が生き返る訳でもないのに、時間の無駄になるような事をしていられるか。今生きている俺達が成すべきなのは、悲しむ事などではない。事実を受け止め、前を向いて歩いて行く事だ」おとなになれば、それがあたり前にできるのかもしれない… でも… 「ボクもやまとお兄ちゃんも、かえでおねえちゃんだって…まだ、子どもなんだよ…?お父さまみたいに、すぐに気もちをかえられない…」 「気持ちを変えろとは、一言も言ってはいない。感情を表に出すな、と言っているんだ。心が顔に出れば、相手に付け込まれる。お前もいずれは、家督を継ぐ者…今の内から、表情を消す事を覚えろ。それと…先程も言った事だが、高木 大和はお前の教育係となった。今後一切…家令・水無月家長女、水無月 楓に対しても名字以外で呼ぶ事は許さん」 イヤだと思っていても、お父さまにさからえない自分がくやしかった。 今は、言うことを聞くしかできないけど… ボクは…お父さまのようには、なりたくない… 「…わかりました」 そうこたえたら、お父さまはゆっくりとうなづいた。 「最後にもう1つ…」 まだ、なにかあるの!? もう…イヤだよ… 「なんですか?」 いちおう聞かなきゃ、はなしがおわらない… 「朔也…お前は来年、カリフォルニアの初等科に入学させる事に決まった。それに合わせて…高木と水無月の2名は、編入学という形で朔也と共に行ってもらう。高木、異論はないな?」 「ございません」 ちょっと、まってよ… ボクは、イロンありまくりだよ… 「ジケンとカリフォルニアと、どういうカンケイがあるの?」 「関係はない。この事件が起こる前から、既に決定していた事。親父が今、外国にいる理由がこれだ。来年のお前の誕生日から、親父とカリフォルニアに住むんだ。そして、9月から初等科に入学する。その手続きをする為、親父が外国に行っている」
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