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「貴様…まさか、水無月を…」
「そんな怖い顔で、睨まないでよ。俺だってさぁ、好き好んでこんな事してんじゃないんだから…抵抗しなければこれ以上は何もしねぇし、そっちが大人しく御子息様を差し出すだけでいいんだよ。簡単な事だろ?」
ボクが行けば、みんなたすかるの…?
フスマに手をかけようとした時…
「戻ってはいけません。私とともに、逃げるのです」
でも…ボクがにげたら、みんなが…
「……あの人は、ボクをさがしてるんだよね?ボクが行けば…」
「あの男の言う事を、真に受けてはいけません!」
手をとられて、おへやからはなれる。
「……でも、はなせばわかってくれるかも……ッ!」
やまとお兄ちゃんが立ち止まるから、せ中にぶつかりそうになった。
「話せば分かる人間なら、最初から刀などふり回しません。今は、逃げる事を最ゆう先になさって下さい」
またうでをひっぱられて、こわい人からにげる。
さいごに見たきょういくがかりのすがたが頭からはなれない…
「……やまとお兄ちゃん、こわいよ…」
目の前がくらくなった時には、やまとお兄ちゃんにだきしめられていた。
やさしくせ中をなでてくれる手は、ふるえていて…
「………ッ……」
ときどき聞こえる声に、顔を上げることができなかった。
どうして、こんなことになったの…?
わるいユメを見ているなら、はやくさめてよ…
目がさめたらあさになってて、いつもみたいにきょういくがかりがきてくれる。
いつもと同じ1日が、はじまるはず…
――ガタッ…!
「なぁんだ、もう鬼ごっこは終わり?案外、呆気なかったねぇ」
さっき、ショウジのむこうから聞こえたこわい人の声…
それと、血がたくさんついたカタナ…
「そんな…父上が、負けるなんて…」
ボクをだきしめながら、やまとお兄ちゃんが少しずつうしろにさがる。
あと少しで、フスマに手がとどく…
「父上?お前、さっき殺した男の息子か?……って事は、その腕の中にいるのが御子息様だな?」
「…………」
やまとお兄ちゃんは、なにもこたえない。
やっとボクの手がとどいた時、だれかがそのフスマを開けた。
「ガキ1人を捕まえるのに、何分かかってんだよ」
「……ッ…!?」
クビをつかまれ、もち上げられた。
くるしい…たすけて…
「朔也様ッ!……ッ…」
――ドサッ…
聞こえなくなった声と、なにかがたおれる音…
やまとお兄ちゃん…?
「……ころしたの…?」
目の前の男が、ニヤリとわらう。
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