第1章 はじまりの子《幼少編》

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「貴様…まさか、水無月を…」 「そんな怖い顔で、睨まないでよ。俺だってさぁ、好き好んでこんな事してんじゃないんだから…抵抗しなければこれ以上は何もしねぇし、そっちが大人しく御子息様を差し出すだけでいいんだよ。簡単な事だろ?」 ボクが行けば、みんなたすかるの…? フスマに手をかけようとした時… 「戻ってはいけません。私とともに、逃げるのです」 でも…ボクがにげたら、みんなが… 「……あの人は、ボクをさがしてるんだよね?ボクが行けば…」 「あの男の言う事を、真に受けてはいけません!」 手をとられて、おへやからはなれる。 「……でも、はなせばわかってくれるかも……ッ!」 やまとお兄ちゃんが立ち止まるから、せ中にぶつかりそうになった。 「話せば分かる人間なら、最初から刀などふり回しません。今は、逃げる事を最ゆう先になさって下さい」 またうでをひっぱられて、こわい人からにげる。 さいごに見たきょういくがかりのすがたが頭からはなれない… 「……やまとお兄ちゃん、こわいよ…」 目の前がくらくなった時には、やまとお兄ちゃんにだきしめられていた。 やさしくせ中をなでてくれる手は、ふるえていて… 「………ッ……」 ときどき聞こえる声に、顔を上げることができなかった。 どうして、こんなことになったの…? わるいユメを見ているなら、はやくさめてよ… 目がさめたらあさになってて、いつもみたいにきょういくがかりがきてくれる。 いつもと同じ1日が、はじまるはず… ――ガタッ…! 「なぁんだ、もう鬼ごっこは終わり?案外、呆気なかったねぇ」 さっき、ショウジのむこうから聞こえたこわい人の声… それと、血がたくさんついたカタナ… 「そんな…父上が、負けるなんて…」 ボクをだきしめながら、やまとお兄ちゃんが少しずつうしろにさがる。 あと少しで、フスマに手がとどく… 「父上?お前、さっき殺した男の息子か?……って事は、その腕の中にいるのが御子息様だな?」 「…………」 やまとお兄ちゃんは、なにもこたえない。 やっとボクの手がとどいた時、だれかがそのフスマを開けた。 「ガキ1人を捕まえるのに、何分かかってんだよ」 「……ッ…!?」 クビをつかまれ、もち上げられた。 くるしい…たすけて… 「朔也様ッ!……ッ…」 ――ドサッ… 聞こえなくなった声と、なにかがたおれる音… やまとお兄ちゃん…? 「……ころしたの…?」 目の前の男が、ニヤリとわらう。
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