風は浪々と……

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 なんにだって始まりがある。  どんなに熟練した者だって、最初は初心者だったのだ。  だからこそ、自分が臆する必要はない。  必要最低限のものは持った。  修練は何度も積んだ。  筋は悪くなかったはずだ。  師となってくれた人も褒めてくれた。  でも、決して彼はいい顔をしてくれなかった。  なぜだろう?  でも、もう時間がない。  なぜなら、一歩を踏み出してしまったから。    僕は一人、草原を踏み出す。  風が凪ぎ青草のベルベッドが優しく揺れていく。  広大な草原の中、動く影はそう多くはない。  今の時期は多くの動物はえさを求めて移動している。  一部の群れが例年なら、此所を訪れるだろう。  それを追って肉食獣も一緒に来るはずだが、その影達は今はない。  草原を抜けるのなら今がチャンスだ。  
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