第1章

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 さすがありとあらゆるDQNを指導してきただけあり、バカ日本代表への扱いも上手かった。私の近藤に対する扱い方は彼から学んだと言ってもいい。私は近藤への対応のみに限定すれば前田をリスペクトしていた。  教室に入り席に座ると同時に、スピーカーから朝のホームルームスタートを知らせる音が鳴る。上原が教室に入るがいつもより少し表情が堅い。 「えーホームルームを始める前に大事な話がある。真剣に聞いて欲しい。多分お前等の中にも知ってる奴はいるとは思うが、最近この近辺に人を襲う凶暴な猫が出没している話がある。先生はそんな話し信じてなかったんだが昨日……隣のクラスの生徒が襲われた」  静まり返っていた教室は一変し、全員が同時に口を動かす。まるで弾けるポップコーン。 「足を咬まれたらしくて、現在入院中だ」  やはり昨日近藤が自慢げに聞かせてくれた話は、都市伝説などではなく本当の話だったようだ。  足を咬まれたと聞くと大したことがないように聞こえるけど入院しているとなるとそこまで軽い怪我でも無いだろう。昨日トマリの部屋にいたグレーの喋る猫の仕業だ。でも目的はなんだろう?化け猫の思考などいくら考えてもわかるはずがない。考えるだけ無駄だ。  それよりも今はトマリだ。トマリを探さなくてはならない。自らの意思で家に帰ってないのか?それとも誘拐されたのか?こんな時多分、トマリが行きそうな場所に向かえば良いんだろうけど、そんな簡単な場所にいるとは思えない。 「いいかお前等、夜は出歩くなよ。それと下校する時は一人で帰るな。あと面白半分で野良猫に近づくなよ特にグレーの猫にはな。怪我して授業が遅れてもいいって奴は好きにしろ。以上。日直っ」  そうして朝のホームルームは終了した。  隣のクラスの生徒がグレーの猫に襲われ、入院したと聞いてもみんなの表情はいつもとさほど変わらない。所詮他人に起きた出来事。自分には関係ない。そんな感じ。斜め後ろの席にいる中川ミチカは隣の席の増田ケイナにさも当たり前のように、今日放課後カラオケ行かない?などと言い始める。  
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