0人が本棚に入れています
本棚に追加
小高い山をゆっくりと登るとあの丸太で造られた高台が見えてきた。私のMY丸太椅子には今日も先客が座っていた。
「レインっ やっぱりきたな」
「リリィ……」
やっぱりリリィだった。
「リリィ……トマリを昨日探したんだけど、やっぱり見つけられなくて……」
「……そうか」
遠慮がちにリリィは呟いた。
「どうしよう……やっぱりあのグレーの猫が言った通りトマリはもう……死んじゃったのかな」
「考えたんだけど、あのグレーの猫を探さないか?」
「探してどうするの?」
「あいつに全部吐かせよう。トマリの居場所、死んでるならどこに遺体があるのか。なぜこの街の人間を襲うのか」
「トマリすら見つけられないのに、たった一匹の猫を探すなんて絶対無理だよ」
大量の砂の中から指輪を探すぐらい不毛だ。
「レインは知りたくない?」
「なにを?」
「あの化け猫がどうしてトマリは死んだなんて言うのか」
「どうかな……トマリの死んだって話も、喋る猫も、なんか現実味なくって……」
「今日さ、学校でいろんな奴に聞いて情報を集めたんだ。あの化け猫のこと」
「なにかわかったの?」
「アタシとレインが知らなかっただけで、結構前から学園内では噂になってたらしい。あの化け猫。一人うちの学園の生徒が襲われたの知ってるだろ? 名前は白須ミナイ。アタシと同じクラスのA組」
「襲われたって?」
「ピアノのレッスンの帰り道で太ももを噛まれた」
「それちょっと凶暴化した普通の猫なんじゃ……」
「いや、咬まれたというより太ももの肉をゴッソリ噛みちぎられた」
「……」
「白須ミナイが入院してる病院も聞いてきた。今から行って話を聞いてこようと思うんだけど、どうする?」
「……うん。行くよ」
そうして私とリリィは山を降り白須ミナイの入院する病院へ向かった。
苫小牧市立病院。
市内で一番大きな病院というだけあり、午後十二時を少し過ぎた時間でも院内は人で溢れていた。
リリィが入口の総合案内で白須ミナイの病室を確認している。少し急ぎ足で私の元に戻るリリィ。
最初のコメントを投稿しよう!