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家を追い出されて幾日か経った。
龍子は街を徘徊していた。
時折現れる黒柳家からの刺客と刀を交える日々を送った。
「おい、女が居るぜ…げへへ襲っちまえ。」
街には正気を疑うようなゴロツキがうようよと居る。
武骨なりとも黒柳家の一族朗等などは極めて品の良い方で、
家から出たこの無駄にメカニカルな街には奪い襲うと言う単純かつ原始的な思考回路の者しか居ない。
遠くからは煙突から煙が轟々と上がっている。
あれは数日前に飛び出して来し実家である。
あれは城と言った方がしっくり来るだろう。堅牢なる壁に囲われた要塞の中には刀と武具を錬成する為の鉄鋼所が在り、
この島の多くの住民が従事している。
また、当主たる黒柳蛯名自らが師範代を務める剣術指南の道場も在り、実子のみならず希望者は誰でも入門出来るが侍と言うよりも荒くれ集団だ。
この街の荒廃ぶりに若干呆れつつも、龍子の野生は静かに呼び起こされていた。
聞き耳を立てるまでも無く遥か先の武器を手にした半裸の男どもの話し声が聞こえてくる。
「止めてよぉ!!」
「止めてよぅ、だってギャハハ!
止めねぇよ!ギャハハ!」
龍子は悲鳴を聞き駆けつける。
道場の帰りだろうか??剣道着姿の女の子がモヒカンヘアーの野蛮な男に脱がされ始めている!!
「おい、脱がしちまえ!!」
「らめぇぇぇ!!」
「止めな!!大の男が女の子相手に寄って集りやがって!
暴れてぇなら俺が相手になるぜ!」
龍子はアウトロー共の前に降り立つ。
怒声を上げながら三人の男達は一斉に襲い掛かった。
しかし瞬く間にアウトロー達はなぎ倒されてしまった。
龍子が手にしていたそれは家を追われた際に辛くも盗んだ木剣である。
「あ、ありがとう…グスン」
既に何かもう手遅れっぽい格好にされた女の子が涙ながらに礼を述べる。
「女の一人歩きは危ない……ぜ!!??」
龍子の目が下半身に釘付けになった。
「俺のと違う!!?」
「あう、あの…僕、男の子なんだ!!」
それは嘗てお風呂で見た父上蛯名を遥かに凌駕していた。
「おと…こ!!?」
「僕、男の娘なんだ!」
「言い直すな!」
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