第1章

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今まで夜に来ることはほとんどなかったが、沢山の光で埋め尽くす街並みは昼間とは別の表情を見せ、中々の景色だった。  MY丸太椅子ではなく、リリィと私の椅子になったその場所に腰を降ろす。 「レイン。なんであの時あのグレーの猫が喋る猫とは違うって思った?」 「それは……」  どこからかガサガサと音がする。  草むらを掻き分ける音。 「おい……」 「シー」  私は立ち上がり口の前に指を運びながら音がする方向を探す。どうやら高台のすぐ近くの草むらからその音が聞こえるようだ。  私はその草むら周辺を無言で指差す。  やっと気づいたのかその場所になんの躊躇いもなく、リリィは突き進んでいった。  リリィが見覚えのあるお土産を持って戻って来た。 「こいつ多分、あの喋る猫だよな?」  リリィはグレーの猫をしっかりと抱き抱えていた。グレーの猫の口には包みに入った水色の飴がぶら下がっている。間違いなくその飴は私がリリィと出会った時にリリィが投げていた飴だった。 「おいっ さっさと喋りやがれ。お前にも聞きたいことがある」 「お、降ろしてくれ」  リリィはゆっくりとグレーの猫を下に降ろすとグレーの猫は器用に二本足で立った状態で話始める。 「猫が飴を食べても、問題ないと思うか?」 「ハァ?」 「頼みがある。この包みを開けてくれないか? しばらく食事をしてなくて死にそうなんだ」 「開けるのは別にいいけど、そんなもん舐めてもお腹一杯にはならないだろ? まぁこっちの質問にちゃんと答えるんなら考えてやる」 「わかった。知っていることは全て話そう」  リリィは飴の包みを開け、私の手の平にのせた。 「え?」 「いや器がないじゃん。だから」  変なところで細かった。というかなぜその役目が私なのか?断る理由もないので仕様がなくグレーの猫の口元に運ぶ。 「じゃあいただきます」 「……どうぞ」  まるで何かに取り憑かれたようにペロペロと飴を舐め始めた。 「フガッ……フガッ」 「ン……プフー」  くすぐったい。  そしてかつて体験したことのない手のベタベタ感が私を襲った。 「あの時お前はなんで三島トマリの家にいた?」 「あの家に住んでいたからだ。そして人間を襲っていたあの猫もだ。つまり私達はトマリに育てられていたということだ」
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