第1章

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■ 「でもな、お前は一人で書いてるんだよ」 「う。確かに引きこもってるが」 「そう言う事じゃなくてな。 今まで、俺は『夏河』に会ったことは無いんだ」 「何言って………!いつもあいつが帰国したら宴会して、その場で企画して大筋詰めて」 流星が苦しそうに眉を落とす。 「お前は、出国の日に『夏河』になってたんだよ。 お前が酔いつぶれて、饒舌になって『夏河』として語り、俺が記録していた」 確かに、翌朝のメモは流星の文字だ。 「そんな、まさか。俺はおかしいのか」 「おかしいかおかしくないかは問題じゃない。 お前が、いい作品を書く上で自然とそうなったんだから俺は受け入れていた。 だが、どうも最近のお前は…… 『夏河』の時が多くて。 今日も出かけただろう。 いい事なんだが。 冬可が取り込まれそうで、心配だ」 酔いが霧散したように背筋が冷えた。 『夏河』は、俺? そんな筈ない。小さい頃から一緒に、祖母ちゃんが生きてる頃からこの家でよく遊んで。 兄弟みたいだって言われてて。 疎遠になってたけど、 突然訪ねてきたあいつを、どうして俺は 『夏河』だと信用したんだろう。 そうだ、俺と夏河しか知らない事を知っていたから 俺が、 知っていた事を……… 夏河という証拠にはならない。
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