第1章

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■ 流星は帰っていった。 夏河は久しぶりの日本酒に舌鼓をうっている。 奥の間に布団を並べて敷いた。 いい歳した男が有り得ねーが、一晩まともな日本語を聞かせないと、抜けないのだ。 仏壇の上の祖母の写真を見上げる。 祖母も物語を紡ぐ人だった。 童話を書いていたらしい。 満州に渡って、夫と死に別れ。 引き揚げてきて、働き尽くした。 筆名は教えてくれなかった。 俺と夏河が預けられた時は、毎夜お話を聞かせてくれた。 「どうしておばあちゃんは、もうお話を書かないの」 夏河がそう訊いたことがある。 ばあちゃんは、笑っていた。 その日のお話は、お話を作るのが好きな女の子の話で。 結末は、こうだった。 『女の子は、神様にもっともっと面白いお話を書ける力を下さいと言いました。 神様はお話の種をたくさん集めなさいと言いました。 それから、種をしまっておく心を柔らかく広げなさいと言いました』 夏河は、酔いつぶれて寝た。 どこのかわからない言語で、おやすみ、ぽい事を言った。 続きは、確か。 お百姓のように、出来たものが誰かの空腹を満たす事はない。 いつ実るのかもわからない あ、思い出した。 『いつか、小さな実ができるやも。そのお話が誰かの心を震わせたのなら』 『それは、たくさんの種になり新しい物語が芽吹くのです』 祖母ちゃん、俺、書いてる。 多分誰も読まなくても 書く
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