11人が本棚に入れています
本棚に追加
■
『……と、いうわけで、今度こそ取材旅行に行こうと思ったんだ』
「はあ、まあ頑張りなよ」
悲痛な声に、通話を切るタイミングを逸した。納期結構ギリギリなんだけどな。
イラストレーターの よんは壁掛け時計を眺めた。
『で、ばばばばバス停で乗ったんだ、やって来たバスに』
「まあそれ以外のものは来ないよね」
『ところが』
「ところが?」
『妙齢の女性が』
「どうしたの」
『後から付いてくる』
よんは、電話を落としそうになった。
「冬可からそんな話が聞けるなんて」
『で、サインをしてくれと言われた。』
「良かったじゃん」
「
▽▼ショッピングモールなんだが、なんで俺が著者だってわかったんだろう」
よんさん、色見本をめくって考える事、3秒。
メディア嫌いの謎の作家、扇 冬可。(せん とーか)
旅行記ミステリーがバックパッカーの口コミから人気になった、まだまだマイナーな作家。
海外在住、いや、外国人かも。実は死亡している
そんな噂もあった。
どうして気付かれたのか不思議だろう。本人は。
溢れ出るカリスマ性のなせる技?
否、
「青い鳥のとこで、流さんが流出してたよー着物で居たら目立つよ、そりゃ」
『何だそれ』
「詳しい事は流星さんに聞きなよ」
これくらいのタイムロスならいいか。
まあ、次の冬可の本は遅れそうだから挿絵いいだろ。
方向音痴、人見知り、引きこもり
三重苦の彼は密室ミステリーみたいな生活なのに。
書くものは世界の美女とオラオラ系。
「……無事に帰れたかな」
最初のコメントを投稿しよう!