第1章

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■ 『……と、いうわけで、今度こそ取材旅行に行こうと思ったんだ』 「はあ、まあ頑張りなよ」 悲痛な声に、通話を切るタイミングを逸した。納期結構ギリギリなんだけどな。 イラストレーターの よんは壁掛け時計を眺めた。 『で、ばばばばバス停で乗ったんだ、やって来たバスに』 「まあそれ以外のものは来ないよね」 『ところが』 「ところが?」 『妙齢の女性が』 「どうしたの」 『後から付いてくる』 よんは、電話を落としそうになった。 「冬可からそんな話が聞けるなんて」 『で、サインをしてくれと言われた。』 「良かったじゃん」 「 ▽▼ショッピングモールなんだが、なんで俺が著者だってわかったんだろう」 よんさん、色見本をめくって考える事、3秒。 メディア嫌いの謎の作家、扇 冬可。(せん とーか) 旅行記ミステリーがバックパッカーの口コミから人気になった、まだまだマイナーな作家。 海外在住、いや、外国人かも。実は死亡している そんな噂もあった。 どうして気付かれたのか不思議だろう。本人は。 溢れ出るカリスマ性のなせる技? 否、 「青い鳥のとこで、流さんが流出してたよー着物で居たら目立つよ、そりゃ」 『何だそれ』 「詳しい事は流星さんに聞きなよ」 これくらいのタイムロスならいいか。 まあ、次の冬可の本は遅れそうだから挿絵いいだろ。 方向音痴、人見知り、引きこもり 三重苦の彼は密室ミステリーみたいな生活なのに。 書くものは世界の美女とオラオラ系。 「……無事に帰れたかな」
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