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足を棒にしてやっと自宅に帰ってきたら、庭で月見酒と洒落こんでいる奴が居た。
「流星……お前どこから忍び込んで」
「この前タヌキが壊した垣根の隙間から堂々と」
寿司桶に氷を入れて酒を冷やしている。
つまみは冷奴
ではなかった。
クリームチーズに醤油とおかか、ネギ。
「美味いけどさ、いつもこればっか」
「若い時の貧乏舌が抜けねえんだよ。
昔は、色々語り合ったよな……」
作家を夢見ていた。
やがて流星は編集者になり、出版社を立ち上げた。小さいながらも専門書を扱い、国内より海外で先に評価された。
「流星……」
「あの頃は、いくらでも書いてたよな」
じりじりと距離を詰められる。
「流星?」
「もう一本、お仕事だ」
「……無理!!!!!」
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