第1章

5/13
前へ
/15ページ
次へ
■ 足を棒にしてやっと自宅に帰ってきたら、庭で月見酒と洒落こんでいる奴が居た。 「流星……お前どこから忍び込んで」 「この前タヌキが壊した垣根の隙間から堂々と」 寿司桶に氷を入れて酒を冷やしている。 つまみは冷奴 ではなかった。 クリームチーズに醤油とおかか、ネギ。 「美味いけどさ、いつもこればっか」 「若い時の貧乏舌が抜けねえんだよ。 昔は、色々語り合ったよな……」 作家を夢見ていた。 やがて流星は編集者になり、出版社を立ち上げた。小さいながらも専門書を扱い、国内より海外で先に評価された。 「流星……」 「あの頃は、いくらでも書いてたよな」 じりじりと距離を詰められる。 「流星?」 「もう一本、お仕事だ」 「……無理!!!!!」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加