第1章

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夏河が世界中を旅して、冬可が書く。 いつの間にかそのスタイルが出来上がっていた。 グレートバリアリーフの蒼の層 波に浮かぶ菱形の光が砂底に遊ぶのも 月光のサハラ砂漠が作る切り絵に ラクダが点々とやすむのも 香菜(パクチー)香る汁麺が湯気たてる 市場で飲んだビールの喉越しも 夏河が訥々と語る言葉がペンに宿り命を持つ 『キーボードでは、ダメなんだ』 そう言って、荒れた屋敷で机に向かい、着物で佇む親友は、変わり者だと思う。 でも、自己暗示の多すぎる彼が、本当はもっと自由になれることを、知っている。 流星は冬可を甘やかしているのかもれない。 世界のあちこちの写真集を広げたまま、机に突っ伏して寝ているのを知っている。 町内のコンビニに行くだけで地図を持ち、隣街に行くのに方位磁石と保存食と携帯トイレを用意するのが、哀れを通り越して愛おしいとさえ…… 「あ、次はBL 書 か な い か?」 「断るーーーー!!」
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