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夏河が世界中を旅して、冬可が書く。
いつの間にかそのスタイルが出来上がっていた。
グレートバリアリーフの蒼の層
波に浮かぶ菱形の光が砂底に遊ぶのも
月光のサハラ砂漠が作る切り絵に
ラクダが点々とやすむのも
香菜(パクチー)香る汁麺が湯気たてる
市場で飲んだビールの喉越しも
夏河が訥々と語る言葉がペンに宿り命を持つ
『キーボードでは、ダメなんだ』
そう言って、荒れた屋敷で机に向かい、着物で佇む親友は、変わり者だと思う。
でも、自己暗示の多すぎる彼が、本当はもっと自由になれることを、知っている。
流星は冬可を甘やかしているのかもれない。
世界のあちこちの写真集を広げたまま、机に突っ伏して寝ているのを知っている。
町内のコンビニに行くだけで地図を持ち、隣街に行くのに方位磁石と保存食と携帯トイレを用意するのが、哀れを通り越して愛おしいとさえ……
「あ、次はBL 書 か な い か?」
「断るーーーー!!」
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