第1章

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流星は手土産の笹かまぼこを食いちぎる。 「サン・テグジュペリの青いバラの挿絵、あれ発見した研究者なんだが、イカネコ氏のインタビュー訳して欲しいんだよ。 」 「ただでさえ、難解な『星の王子様』を?そんな研究者の翻訳は無理だって。」 『♪もしかしてだけど~♪ もしかしてだけど~♪ 牛乳パックで椅子作ったら……』 「おお、よん。 どうした」 流星の着信音だった。 (椅子がどうしたんだ……!?) 「おう。トーカならちゃんと家に着いてるぞ。ハハ心配症だな そうそう、百合イベントの会場抑えたから、有望な作家さん誘ってるんだけど、誰か紹介してくんねーか?……あ、切れた」 「なあ、椅子がどうしたんだよ……」 「そろそろ冷えるな。入ろう。」 「てゆーかここオレの家!」 「冬可」 流星が真面目な顔で振り向いた。 「俺達ももう若くはない。 そろそろ考えるべきだと思うんだ」 こんなのは、あの時みたいだ。 『俺、書くより本作るのが好きだ。お前は書け。それしか能がないから。』 そう言って 物語を作るのを止めた、あの日 「流星、お前また」 「……トーカ、 とろろ昆布に柚子胡椒と梅干しで吸い物が出来るぞ」 「要するに、冷酒が年食って辛いので温まりたいから作れってことだな」 「そうとも言うな」
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