第1章

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「フランスといえば、イカネコ氏のビジネスパートナーで薔薇研究員のリオン君がね、個人で青い薔薇を咲かせたんだよ。それを表紙にして一冊作りたいんだよな」 流星が汁椀を片手で持ち上げる。本来なら不作法なのだが、様になる。 「トーカ、お前は一人で書ける。」 「俺は一人では一行も書けなかった。 全開の水の音も。 詳細な資料をくれたイカネコ氏、 青い薔薇のイメージをくれたリオン君、 ハッパをかけてくれたお前、 表紙に青い薔薇を置いて、躍動感をくれた、よん。 あれで、最後の最後で変えたんだから。」 「あれは焦ったな。 下手なもん書いたら絶交してるぜ」 「それに、夏河。あいつの見た景色がないと俺は書けない」 風鈴が澄んだ音色を運ぶ。 ああ、夏もそろそろ終わりだ。 酔いが回ったのか、目を瞑ると終わったはずの物語が動き出す。 ジェンべのリズム バオバブの木 水しぶきの中、煌めく頼人とリィ。 神の家、キリマンジャロ 三人組 炎を見つめるユルグ 「まだ、残ってた……!」 「ダメよー。それはオレの笹かまぼこ。」 「いらねー」
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