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「フランスといえば、イカネコ氏のビジネスパートナーで薔薇研究員のリオン君がね、個人で青い薔薇を咲かせたんだよ。それを表紙にして一冊作りたいんだよな」
流星が汁椀を片手で持ち上げる。本来なら不作法なのだが、様になる。
「トーカ、お前は一人で書ける。」
「俺は一人では一行も書けなかった。
全開の水の音も。
詳細な資料をくれたイカネコ氏、
青い薔薇のイメージをくれたリオン君、
ハッパをかけてくれたお前、
表紙に青い薔薇を置いて、躍動感をくれた、よん。
あれで、最後の最後で変えたんだから。」
「あれは焦ったな。
下手なもん書いたら絶交してるぜ」
「それに、夏河。あいつの見た景色がないと俺は書けない」
風鈴が澄んだ音色を運ぶ。
ああ、夏もそろそろ終わりだ。
酔いが回ったのか、目を瞑ると終わったはずの物語が動き出す。
ジェンべのリズム
バオバブの木
水しぶきの中、煌めく頼人とリィ。
神の家、キリマンジャロ
三人組
炎を見つめるユルグ
「まだ、残ってた……!」
「ダメよー。それはオレの笹かまぼこ。」
「いらねー」
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