その少女、有頂天。

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3限開始5分前になって、私は保健室を出ることにした。 「宮路さん」 名前を呼ばれて振り返ると、まなちゃんが大きな絆創膏を掴んでいた。 例の、カジヤン君のおでこに貼られているのと同じ種類の絆創膏だった。 「…私、貼らないよ?」 「違うわよ。梶ヶ谷君に渡して。かゆいから剥がしたんなら、彼、また剥がすわよ」 絶対ね、と付け足すあたりを見ると、カジヤン君はしょっちゅう怪我をしてるのかもしれない。 それでまなちゃんにお世話になってるのかもしれない。 「ひいきだぁ」 「大木先生にチクってもいいんだけど…」 「行ってまいります!!」 「よろしい」 はやく行きなさい、という柔らかい言葉に背を押されて、今度こそ本当に保健室をでた。 3組のカジヤン君の元に行くのは面倒なので、斉藤にあずけよう。 斉藤が渡さないと私がまなちゃんに殴られそうだけど、そしたら私が斉藤を殴ろう。うん、平和的解決。 いや、平和じゃない。 私が斉藤を殴ったら大木がとんでくる。 そしたら…反省文か、謹慎処分になる。 面倒だ。 なら、まなちゃんに殴られそうになったら斉藤を縦にしよう。 うん、超平和的解決。 いや、平和じゃない。 まなちゃんはブサイクじゃないから、斉藤にとってはそれは幸せなことかもしれない。 …ないか。さすがにないか。 別に斉藤はMなわけでもないし。 ということで、超平和的解決策もあることだし、斉藤に託そう。
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