その少女、驚く。

2/11
前へ
/150ページ
次へ
◇ 「…、」 一晩考えました。 わかりませんでした。 顔見かけたら声をかけて、LINEまで交換してしまったあいてのフルネームをどうやって知ればいいのだろう。 もしかしたらLINEの名前がフルネームかも!!と期待したが、案の定〔カジ〕だし。 斉藤もカジヤンかカジとしか呼ばないし。 苗字はわかってるんだけど、下の名前は何なんだろう。 高校の名札は苗字しか書いてないし、しかもカジヤン君名札つけてないし。 ここはやはり斉藤に聞くべきなんだろうか。 そう思ったが、別に知らないと困るわけでもない。 呼ぶわけでもないし。 ただ、地味に気になる。 のどに刺さった小骨みたいに、地味ぃに違和感が寝そべってる。 下駄箱を見ても、貼ってある紙には学年、クラス、出席番号しか書かれていない。 ものすごくいざとなったら教科書でも借りて、名前を確認すればいいとは思うが…。 この前、斉藤に貸し出されていた教科書にはでかでかと『カジ』としか書かれていなかった。 なんでフルネーム書かないんだよ!!理不尽極まりないクレームをつけたいところだが…。 「…、」 私の教科書には名前なんて書いてなかった。 宮路の「み」の字も書かれてない。 この大切に扱われてない感じが私独特のものだ。 …ほかの人と混ざったら区別つかないけど。 彼の名前は何だ!! 梶ヶ谷、なんだ!! 「くっそ、気持ち悪い!」 「え。吐くなよ?」 「吐かねぇよバカァ!!」 あれ。そういえば斉藤の下の名前は…? これはまずい、と必死になったがすぐに思い出した。 こんな感じに、思い出すみたいに、さらっとわからないものだろうか。 これじゃ授業に集中できない。 …あ、いつも集中してないや。ノートとってないときあるし。 これじゃ夜眠れない。 …あ、昨日ぐっすりだった。 これじゃ…これじゃ…。 「気持ち悪いっつーの!!」 「そりゃお前だ」 「…どーゆーことだよ、君」 私は斉藤の頭を捻った。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加