1人が本棚に入れています
本棚に追加
値踏みし、値切り、諦め、他を鑑る。
別にこのガラクタに、のんこの茶碗という訳じゃない。
だからこそ、私が一つ万年筆を手にすれば
オヤジは視ない素振りで、ほくそ笑むしから。
悔しいと思い、露西亜文学などの古書を手にすれば
それまたそれで、やけに楽しそうであるので
私は店のオヤジを楽しませないで、ピンときたモノが欲しい。
そして、それを値切って買う。
”選び方”とは、多分だが其処を示している。
菊一文字であろうが、発条絡繰の猿の叩きシンバル人形でも
巨大な光る水蟷螂色の風船でも全くいいし
読み方すら解らない異国のハーブ茶でも構わない
でも、そこが多分違うのだ。
夜の市の灯りは、蜉蝣に近いから
狙いをつけあたり撃っても、空回りなのだ。
その中に一つのブリキの紛い物の玩具で
某魔法使いの動く城に、似てるような気がする
プラモデルのようなモノを手にして
夜の市の灯りを潜って、店のオヤジに
これは幾らか?と訊いてみた。
すると、オヤジはデジタル時計でも見るような
馬鹿面をした私に、苦笑いを浮かべて言った。
「買い方が判ってきた様なツラになったな。
夜祭りで眼が、一等燃えてると、それだけ冷かしたって事だ。
勉強になったかい?」
私も返す。「ええ。」
「ならこっちも、ちょいと勉強しようじゃねぇか。
で、いくらなら買うのかい?」
更に切り込んでみる。
「値を考える時間を楽しむことは有りですか?」
<*最初に戻る*>
最初のコメントを投稿しよう!