第1章

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値踏みし、値切り、諦め、他を鑑る。  別にこのガラクタに、のんこの茶碗という訳じゃない。 だからこそ、私が一つ万年筆を手にすれば オヤジは視ない素振りで、ほくそ笑むしから。  悔しいと思い、露西亜文学などの古書を手にすれば それまたそれで、やけに楽しそうであるので 私は店のオヤジを楽しませないで、ピンときたモノが欲しい。  そして、それを値切って買う。  ”選び方”とは、多分だが其処を示している。 菊一文字であろうが、発条絡繰の猿の叩きシンバル人形でも 巨大な光る水蟷螂色の風船でも全くいいし 読み方すら解らない異国のハーブ茶でも構わない  でも、そこが多分違うのだ。 夜の市の灯りは、蜉蝣に近いから 狙いをつけあたり撃っても、空回りなのだ。  その中に一つのブリキの紛い物の玩具で 某魔法使いの動く城に、似てるような気がする  プラモデルのようなモノを手にして 夜の市の灯りを潜って、店のオヤジに これは幾らか?と訊いてみた。  すると、オヤジはデジタル時計でも見るような 馬鹿面をした私に、苦笑いを浮かべて言った。 「買い方が判ってきた様なツラになったな。 夜祭りで眼が、一等燃えてると、それだけ冷かしたって事だ。 勉強になったかい?」  私も返す。「ええ。」 「ならこっちも、ちょいと勉強しようじゃねぇか。 で、いくらなら買うのかい?」  更に切り込んでみる。 「値を考える時間を楽しむことは有りですか?」 <*最初に戻る*>
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