第1章

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「そりゃあ駄目だ、売れないってんじゃねえよ。 買い方が間違ってるんでもない。選び方が違うんだ。」  店のオヤジは、ちょいと小首を傾げて続けた。 「そうよなぁ、夜店のガラクタ市ってのは、まぁ、あれだ。 そちらさんの訛りから察するとだ、フリマ? とかそういうのに近い。だがな、まぁ聞きねぇ。  昼間の太陽が大地を焼け焦がす、砂漠の惑星で 金ピカの通訳ロボットや、万能な修理ロボットの コンビを買うっていうなら、まぁ大した目利きは 要らんだろうがな、夜店ってやつは厄介でな。  あんたも、お国はどちらか知らねぇが、 どこにだって、夜の市ってのはあんだろう? あの薄明かりに、すわ蛾だの何だのが纏わり憑いて 冷かす積もり積もりで、どいつもこいつも つい足を留めちまう。  そうだよ、停めるんじゃねえんだ。 留めるんだよ、おまえさん実に俺の前で そうやって、お宝とゴミを眺めてから  一品  手に持ったじゃねぇか。 何、買うかどうかは二の次よ。 そういうのは、朝早くの ”新鮮な水揚げの市場”にでも行ってくれよ。  夜の市はな。 ”神仙”なモノしか手に入らねぇし 目に映らなねぇんだ。  金魚も綿菓子も、林檎飴やら狐面だって なにもかも薄い灯りが、あんたに謎賭けしてるわけだ。  さぁて、こちらも蝦蟇の油売りでないんでな。 講釈は御仕舞いだ。店は広げたまんまだ。 勝手に漁ってくんねい。」  私からすれば、決まり文句が流暢すぎて 蝦蟇の云々とも、さして変わらない気もしたが あまり漁りに深入りすれば、土壺に嵌まってどっぴんしゃん。 けだし間抜けたれば、どんどこしょ。  どうも盆踊りの後のせいか、何か櫓太鼓を見上げ過ぎたか オヤジの思う壺にどっぴんしゃん。  誰も呼ぶ事もない為に、畢竟、なにかしら手にしては 値踏みし、値切り、諦め、他を鑑る。  別に、このガラクタから青井戸茶碗を見つけたい訳じゃない。 だからこそ、私が一つ時計を手にすれば オヤジは視ない素振りで、ほくそ笑むのだ。  悔しいと思い、仏蘭西文学などの古書を手にすれば それまたそれで、やけに楽しそうであるので 私は店のオヤジを楽しませないで、ピンときたモノが欲しい。  そして、それを値切って買う。  ”選び方”とは、多分だが其処を示している。 名刀虎徹であろうが、発条絡繰の御茶運び童人形であろうが 線香花火の色味の、サイリュームクラシックでもいいし
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