第1章

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 疲れたら戻るもんさ、貝の中においでよ。 どんなに旅をしたって、帰っておいでな。  この貝は最高さ。暖かく涼しくいつも最高で 理想的な隠れ家なんだ。  魚でいられて良かったって本当にそう思うんだ。 ヤシガニなんかじゃ、この貝にずうっと隠れてなんかいられやしないんだ。 少し眠いか、水が冷たいんじゃないかな。  唇が紫色だよ。 紫という色はね、太陽がドブンと沈んだ後の色だから あまり素敵な色じゃないって海の中では言うのさ。  でも平気だよ、貝の中からなら海はいつだって青いんだ。 カニのやつも言ってた、外は世界がひっくり返ったように青い時があるんだって。  おいでよ、貝の中なら何もかも不安じゃないんだ。 この隙間から一緒に海を眺めよう。  ほら、おいで。  さぁ。  バタン。
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