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「昨日の仮契約書の訂正をしにきたんだ」
「訂正ですか?」
結城さんは怪訝そうに斑目を見上げる。
私も訂正する箇所があっただろうかと考える。
「名前、芹沢じゃなくて斑目だから」
「あっ」
言われて確かに私は芹沢とサインしたことを思い出した。
ご丁寧に判も芹沢で押した。
「雅号は芹沢世理でいいけど、それ以外は斑目世理に書き換えて。中田さんもそのことは知ってるから」
「斑目、ですか……?」
結城さんは口に手をあて、かなり驚いていた。
そして周りの社員もざわつき始める。
「ご結婚されたんですか『社長』」
「しゃ、しゃちょー!?」
「うん。夏にしたよ。世理、そこに座って待ってて。上に居る常務のアポ取ってくるから」
「あ、はい」
突然明かされた斑目の素性に呆然とする私をよそに、斑目はエレベーターへと姿を消した。
私は結城さんに案内され、小さな休憩スペースへと移動する。
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