召喚されたら人間界じゃなかった件

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世界は、退屈で、つまらないもの。それが俺の知る世界の全てだった。 喋り過ぎれば疎まれ、黙っていると蔑まれる。何をしてもうまくいかず、うまく行く方が少ない。たまにうまく行っても、なんくそ付けられて闇に消される。 こんな何もない、クソみたいに穢れた世界、生きる意味なんてどこにもない。 「と言うわけで、旅に出ます。探さないでください、っと」 よし。完璧な言い訳だ。これを封筒に入れてっと。 「さ、家出しよ」 こんな世界、もとい家なんてもういたくない。行く場所なんてないが、一応漫画喫茶とかネカフェなんかもあるし大丈夫だろ。 纏めた荷物を背負って、家人がいない間に家を出る。 「右よーし。左よーし、いざっ。まだ見ぬ世界を見に!」 と、右足を踏み出した瞬間。 足元が虹色の光に輝くと、目の前が急に暗転した。 あ~れ~。 「ぶべっ!?」 お、オゥ……あ、頭から落ちた……! 目の前がチカチカする……! 「だ、大丈夫ですか?」 「う、うぁ? だ、誰……でしゅか……?」 い、いきなり声をかけないで欲しい。ビビって声が震えるから。 「え、えっと……こほん。ようこそ、メシア様」 ……誰のこと? 「お、俺はメシアなんて名前じゃない。『虹神真(にじがみまこと)だ』」 「え? だって召喚されたから、メシア様じゃないんですか?」 「え?」 「え?」 何? 召喚? 頭沸いてるのかこの……女……あ? 「そ、その翼……」 「あ、これですか? 魔族の証です」 は? 魔族? それってあの魔族だよな? 「こほん。それでは、メシア様。貴方様を召喚したのは他でもありません」 「だから、俺はメシアなんかじゃーー」 「人間からの進行を食い止め、私達魔族を助けて下さい!」 あの、聞いてる?
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