第1章

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 真っ暗な部屋で目が覚めたみたい。 床が冷たく硬いので、ベッドの上じゃない。  ここは、どこ?  音が無い。 本当に真っ暗だ。 少し経てば、目が慣れてくると思った。 だが、一向に何も薄っすらとした 影形のようなものさえ見えない。 自分自身を触ってみた。 頬に掌が当たった。 掌さえ見えない。  そのまま掌で体をなぞった。 何かは着ているような感じがする。 摘まんで眼を向けても、 普段、私が着慣れているような感じがしない。 マキシ丈のワンピースか何かみたいだけど 触っただけでも解るほど違和感がある。    これは私服じゃない。  裸足なのは判るけれど 恐々と足で近くの床を滑らして 何かサンダルとか、 室内ならスリッパでもいいから 何かないか探ってみても、    無い。  床が冷たくツルツルな感じがするだけ。  室内?  そういえば、なんで私はここが 真っ暗な部屋だと、思ったのだろう? こんな場所は、知らない。  でも、知らないかどうか ちょっと自信もない。 ただ真っ暗だから。  そうだ、外で完全な真っ暗な状態を こんなに長く感じた事がないんだ。 それに床は平らなようだし 私は裸足な事は変だと思わなかったし 自分の部屋のベッドで寝たと思ったんだけど。  長く?  いまは何時ごろだろう。 屋内だと思うのだけど、時間を確認できない。 衣服の感触と、床の感触だけしかない。 さっきから声を出してもいるのだけど 「誰か 出してください 誰かいませんか」  声が返ってくる事もないし 壁に反射しているような部屋らしい感覚もない。 床になにかあると怖いし 這う様にして少し動き回ってみたけど 結構、広いような気もするし 自分の部屋とそんなに変わらない気もする。  床は冷たいけれど 寒くはないし、暑くも無い。 丁度いい快適な温度とか、そういうんじゃなくて 温度の感覚が床にしかない。 あとは掌くらいしか。  湿気も感じないし、埃っぽくない。 清潔なのかどうか判らないけど 私が着ている服は、病院で診察を受ける時に 着るようなイメージがあったから 勝手に清潔な空気に感じてた。  空気?  そういえば何の匂いもしない。 私はよくあるボブだけど いつものシャンプーの匂いもしない。  慌てて掌を鼻の近くだと思う辺りに持ってきて 嗅いでみたけれど、何も感じない。 ついでに指先を、軽く舐めたけど 何も変な感じはしなかった。
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