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*「まぁそういう考え方も、あるけれどさ」
「そうじゃないの。そういう考えしかないの。」
*「うーん。それを考えるのは君の自由だけど、俺の考えだって」
「無いの。あなたの考えは私の考えの延長上なの、
私の考えはあなたにだけしか通じないようになっているの。」
*「余りにも一方通行過ぎないんじゃないかな?」
「だって一方通行なんだから、逆走したり出来ないでしょ?」
*「けれども、俺はその一方通行である道の存在さえ知らなかったんだ、
責められても流石に詫びようもないし…」
「謝って欲しいって言ってないじゃない。」
*「じゃあ、何を欲してるっていうのさ?」
「この鬱屈とした、ある意味で本能みたいな悲観した気分は解る?」
*「まぁ、確実とは言わないけれど、少なからず気持ちが沈んでいるか、
若しくは苛立っているって事は、想像できるし間違っていないとは思ってるよ。」
「解っているなら、唯、前だけに進めばいいだけ。犀の角とは言ってないよ。」
*「何それ?お釈迦さまだか、なんかの言葉だっけ。」
「そんな事はどうでもいいの。そういう無駄口は嫌悪に繋がり易いんだよ。」
*「わかった。でも、君の本能的悲観を俺にはどうやったら
手助けできるのか、そこまでは解らないよ。すまないけれど。」
「珈琲、冷めるよ。」
*「ああ、うん。もう唯の苦い墨汁みたいだよ。」
「何それ。あなたはそうやって1時の次は2時、夏の後は秋って
線を引いていて実質がずっしり詰った有用時間よりも、
計測や観測した記号でしかない、紙に記入できる時間しか
興味がないじゃない。いつもそう。」
*「さすがにそれは納得出来ないなぁ。侮辱されてる気持ちだよ。」
「じゃあ、あなたはアイスコーヒーもホットコーヒーも飲むくせに
温いときだけ、苦い墨汁なんて悪口をいうの。」
*「いや、冗談のつもりだったんだ、不味いとまでは言ってないよ。」
「なら、私にはいつも冗談をいうの?悲観的な私にいつも。」
*「風味や香りは存分じゃなかったよ、伝わらなかったのは
俺のせいでもあるし、冷める事が当たり前の珈琲の個性だよ。」
「じゃあ個性は否定しないのね。それでも天津甘栗なんか
必ず真ん中から割って剥くでしょう。いまもそう、私は真ん中から真っ二つ。」
*「俺にそんな権利はないし、悲観的であることも個性じゃない。
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