第1章

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  それとも、悲観的なら一方通行は許されるって思うの?」 「どういうこと?」 *「君は温くなった珈琲じゃない。けれど温くても俺は   ユーモアで味わい方を、接触する結節点を増やしたいって思うよ。」 「じゃあ、私は、」 *「そうなんだよ。君は片思いじゃないんだ最初から。」 「でも、好きっていうのは譲らない。」 *「意地っ張りだなあ。悲観的っていうのは   珈琲へのミルクみたいなもんだと思うけどな。」 「好き。」 *「結構、強引だね。それでも悲観的なんだ?   真ん中から割る甘栗みたいな言い方だね。」 「好き。あなたが好き。」 *「悪いけど俺は君が好きであって、君が誰を好きであるかは、   嬉しかったり悲しかったりしても、重大ではないよ。   珈琲の温度みたいに。」 「好き。大好き。どうしても好き。」 *「一方通行が好きなのかい?」 「好き。好き。何もかも好き。涙を拭く気もない程に好き。」 *「まぁそういう考え方も、あるけれどさ」  ウエイターが珈琲のおかわりを 持ってくるまで終らない。  俺たちは壊れかけていても終らない。 豆を挽く匂いが香ばしい。
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