第1章

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 別に王女だからといって、万人からみて眉目秀麗という義務も無いのですけれど プリンセスとしてなすべき公務を、しっかりこなしていれば問題も無いのです。  我国にも社会的な格差は、もちろんあります。 だからといって、目をつむっているわけでもありません。 秘密裏に城下に出て視察する事も、度々あります。 お父様は、つまりは国王陛下ですが、余り良い顔をなさいません。 お転婆だとか、家臣を信頼できぬのかとぼやいています。  でも、そうではないのです。 家臣への信頼は無論ありますし、信頼のおけぬ輩などを お父様が厳しく監視されているのも、判っています。 故に町へ出れば、お父様が概ね民から慕われている事も知っています。  ただ、王女だからこそ学び世の中を広く知る事も大事です。 町へ出れば、体の具合が悪い人や、足元をみて高額で薬を売る医者もいます。 美しい金髪を売ってお金にする人も、パンを盗む子供も、 酒場で酔って殴りあう男性達も、路地裏に夕方から立つ女性もいます。 多くを見て何をするべきかを、考える事ばかりあります。  同時に私が王女である限り、食べる事に困らない事実も認めています。 城下町へのお忍びにはバスケットにお弁当を持って行きます。  服装は可能な限り、プリンセス付きの世話役に用意して貰います。 彼女達の用意するドレス……?というか、服はシンプルですが 丈夫ですし、汚してもよい事が何よりなのです。 袖を通せば快適な気持ちになって、出かけられます。  恐らくはお父様の命令で、どこからか衛兵達が庶民装束に身をやつして あっちこっちから見ているのでしょう。でも手出しはさせません。 今日はビートルズのアルバムを買いに行く予定です。 インスタントラーメンを食べた事もありますし、漫画だって読みます。  でも私が公務でお会いする方々は、どこの国の王子でも貴族の人も 誰もそういうお話は致しません。中にはハンバーガーを知らない人までいます。 だからといって、彼らを苦笑する事が出来るわけでもないのです。  いつも予想外な所で、私の無知から問題になりそうな事もありました。 アリアナとは、彼女が給仕として働く食堂の裏の木陰で逢いました。 ランチの為の休憩中に、よければ、ご一緒しても?と声をかけてみたのです。  最初、彼女は明らかに不審そうな目で、自分のパンやソーセージを
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