第1章

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隠すようにして、怪訝な顔つきをしながら、私が誰かと訊きました。 私は咄嗟に、町の西側の方で学生をしてるのです。と答えました。  その食堂から見て、城下町西は城がある場所で、 同時に大学がいくつかあります。嘘とも言い切れません。 中には海外から、最近では日本などの先進国から留学に来る人もいます。 同時に、私が大学ではなくとも、王立院で勉学に励むのも事実です。 「何だ、学生さんか。その身なりだと貧乏学生って程でもないんだね。 バスケットの中身は何さ?半分、交換してもいいよ。名前は?」  アリアナが笑顔で、横に座っても良いと、芝生を手でポンポン叩いたので バスケットの中の包んだ布を、敷物にしながらディルと名乗りました。 本当はディアスプロと申しますが。さすがにそうは名乗れません。すると 「ふうん。結構、お嬢さんなんだ。」  と笑われてしまいました。 私は、適当に城の厨房からデタラメに選んで持ってきた フカフカな白いパンを半分にし、缶詰を1つ開けてから 小皿を1つと銀のフォークを、アリアナに渡しました。 ワインを1本だけ、持ってきたのですがグラスを忘れて どうしようかと思っていた時。  ソーセージを半分に折っていたアリアナが、私をまた 不審そうに見つめています。  私がアリアナのお店からグラスを借りられないか 訊こうと思ったと同時に、彼女はすぐに私から一歩退きました。 「あ、あんた、それ何処で盗んできたの?!」  え?私は彼女が見ているのが私が持っているワインだと気付きました。 盗んでなどいません。それは流石に濡れ衣ですから否定しました。 「そのワイン1本で、ウチの店のモノ全部買える値段だよ?! 店ごとだって買えるかもわからない!」  そう言われて、ようやく気付きました。王室にも王室のあり方があって あるべき所に必要なモノはあるのが、世の常だと。 ワインを見つめている内に、アリアナは缶詰の開けてない方を 自分のポケットに入れようとしました。 「この缶詰だってそうだ。一缶で一週間分のパンになる。」  私は観念して、アリアナの疑いを晴らすために。 その結果、彼女と友人になる事を諦めてでも、改めて自己紹介し 嘘をついた事を、詫びました。 「まさかディアスプロ姫様が、しょっちゅう町の中を出歩いてる オテンバ姫だったなんてね。なるほど、こんなワインも納得いくわ。」
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