第1章

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 贅沢品であるという自覚が無い訳ではないのです。 ただ。 「いいんだよ、それで。」  アリアナはまた座りました。そしてガツガツとパンを齧りながら 「王室は国民に後ろめたいなんて思っちゃだめさ。 そういう立場だって、必要だからある立場なんだ。」  しかし私は、後ろめたさを感じた事はありません。 そのように言うと、アリアナはこっちを見てから 「じゃあ、食べ物が無かったら、お姫様はどうするんだい?」  と訊ねられました。だから、その時は早くに寝てしまいます。 と答えました。アリアナはゲラゲラと笑い出しました。 「お姫様、あんた今日は何をしに町まで来たのさ?」  あ、あの、よければ町中で姫と呼ばないで頂けると助かるのですが。 「ああ、そうか、じゃあディル。変な名前の略し方ね。 自分で考えたの?」  いえ、私が飼っている黒猫のトリックが、いつも私をそう呼ぶのです。 「ええ?!ディルの猫って喋るのかい?!」  ワインと同じように驚いています。そう言われてみると町の猫は 喋らないで大人しく寝ている事が多いですね。 「いや、猫は喋らないから……。」  そうなのですか。王立院とは別に修得する、 王家だけの魔法を、代々継承するのですが 町の皆さんには知られていないようなので気にはしてましたが。 あ、これは言ってはいけない事だったのでしょうか?  アリアナは又、ゲラゲラ笑っています。 「じゃあ、ディルの魔法で猫と会話できるのかい?」  そうだと思います。但し魔女ではありませんから、人々を 脅威に曝すような危険な魔法は、修得しません。 お母様から勉学の時間のみ、呪文書のような本を渡されて その時間だけ使ってよい事になっています。  ただ、黒猫のトリックと話せるようになって それが嬉しくて、ついお母様に内緒でその魔法だけ解かないで 今も話せるのですが、黒猫のトリックは、度々、町へ出かけます。 色々な話を聞かせてくれるので、私も町へ……。 えっと勉強に、来るのです。 「その魔法は私達にも使えるの?」  丁度、側を灰色の奇麗な毛並みの猫が通りました。  どうでしょう。呪文書自体の表紙に手を置いて使いますから 呪文書があれば使えるかもしれませんけれど……。 「……ど?」  やった事はないし門外不出なので、難しいかもしれません。 なんというか内容が、難しいという意味ではなくて
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