第1章

5/7

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
例えば我国の名門と言われる、ニコロデ大学へ留学に来た 勤勉な日本の学生の方でも、日本人使用不可という気がします。  呪文書の言葉は、ただ唱えるだけでは駄目なのです。 言葉から何かを引っ張り出すような、掴み取るような勢いで 正確な発音が必要なのです。  その発音は王家でも、女性だけにしか出せない声なのです。 ですからお父様にも出来ないのです。 私には友人が居なかったので、トリックと話せるようになった事は かけがえのない、そんな気持ちだったのです。 「ふうん。さっき、町へ来るって言ってた時、少し躊躇ったのは?」  え、えっと、あの、その。 「言えない事?」  いえ、そうじゃなくて。ビートルズのアルバムを 買いに行こうと思いまして。  アリアナは又、噴出して、一通り食べ終わると、 さっきのパンは凄くやわらかい、と彼女は言った後です。 ワインをバスケットに押し返してきました。 「そいつは夜、飲むよ。あんたが乾杯したくなるから。」  そういって、私はようやく食べ終わったバスケットを片手に アリアナが働く、食堂へ手をひかれて入っていきました。  お店の看板にある名前は”CATBAR” 灰色の猫の絵が描いてあります。さっきの猫かもしれません。 「マスター!一人、手伝い入れるからね。」 「おいおい、アリアナ、勝手に決めるなよ。まぁ週末だし助かるけれどな。」  それから、ディナーの時間までは大忙しでした。 お城の者達もこのように、しているのでしょう。 無我夢中で、アリアナの真似をしながら運んだり片付けたりです。  お客さんも夕食が済むと、落ち着いてきて 酒場として、お店の雰囲気が変わりました。 真っ黒の、少しよれた感じですが、 細身の男性が入って来ました。  カウンターのお客さんが 「おう、待ってたぜ!折角の週末だ、ゆったりしたのを 弾いてくれよ。」  そういわれて、彼はヴァイオリンの調弦を済ませると ビートルズの曲を弾いてくれたのです! 私は感激しました。思わず見惚れているとアリアナが 「ディル。あんたピアノ弾けるだろ?行ってきな」  そう言いながら、ヴァイオリンを弾く彼の横にある アップライトのピアノを指差しました。  いえいえさすがに無理です。急にそんな。  あっというまに、ピアノに座らせられました。 一曲目のヴァイオリンを弾き終わって、拍手が鳴りました。 私も彼に拍手を送りました。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加