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すると彼は一礼してから、私に向き直り。
「私はパケットと申します、しがないヴァイオリン弾きです。」
お客さんからは、世界一のだろう?!と冷かす声。
それに笑顔で再び一礼してから
「では、お嬢さん。稚拙ながら最初に、ワンフレーズ弾きますので
そこからEmでお願い致します。」
と言ってから、ヴァイオリンを構えました。
思わず私も釣られて、ハイ。と言って彼に手を惹かれる様に
ピアノを弾き始めました。
その自由な事!楽しい事♪
アリアナや、マスターと一緒にお客さんも楽しんでいる事。
ピアノの上に誰かが大きなビールのジョッキを置きました。
どんどん硬貨が山のようになります。
演奏が終ってパケットも私もお客さんに礼をしてから
私は、休憩しながら夕食の賄いを食べている
アリアナの所へ行きました。
私の分のパスタも用意されていました。
パケットは、マスターにジョッキと硬貨のいくらかを渡しています。
彼自身のパスタを持って、こちらのテーブルを探しているようです。
先ほどはあんなに楽しかったのに、何か急に恥かしくなって
今は何故かパケットを見る事が出来ずに、下を向いていると
アリアナが突然。
「パケット!こっちだよ!」
「ああ、アリアナ。今日、私の演奏を最高に盛り上げてくれた
こちらのお嬢さんは、どちらの方かい?初めてお会いすると思うけど。」
「あたしの友達のディルだよ。」
「そうか、じゃあアリアナにとって最初の友達というわけだね。」
え?
「改めて初めまして。アリアナの兄のパケットです。
今後もどうぞ、宜しくね。」
は、はい。
「おや?お嬢さん方のグラスが空じゃないか。
しかも3個もあるし。」
アリアナが、待ってましたとばかりに、私の横の席に置いたバスケットから
例のワインを引き抜くと、3つのグラスに注ぎながら言いました。
「酒は呑む為にあるんだよ。」
その夜は帰宅してから、見張りの者に告げ口されたのか
かなり厳しく叱られました。酔っていたのが更に悪かったのです。
当分、外出禁止と言われてしまいました。
もう、パケットやアリアナに会えないかと考えると。絶望的です。
黒猫のトリックに話して、心の支えを取って貰おうと思ったのです。
トリックは情けないなぁ。という感じで言いました。
「王女だからって、猫に頼ってばかりじゃ駄目なんだけどなぁ。
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