第1章

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すると彼は一礼してから、私に向き直り。 「私はパケットと申します、しがないヴァイオリン弾きです。」  お客さんからは、世界一のだろう?!と冷かす声。 それに笑顔で再び一礼してから 「では、お嬢さん。稚拙ながら最初に、ワンフレーズ弾きますので そこからEmでお願い致します。」  と言ってから、ヴァイオリンを構えました。 思わず私も釣られて、ハイ。と言って彼に手を惹かれる様に ピアノを弾き始めました。  その自由な事!楽しい事♪ アリアナや、マスターと一緒にお客さんも楽しんでいる事。  ピアノの上に誰かが大きなビールのジョッキを置きました。 どんどん硬貨が山のようになります。  演奏が終ってパケットも私もお客さんに礼をしてから 私は、休憩しながら夕食の賄いを食べている アリアナの所へ行きました。 私の分のパスタも用意されていました。  パケットは、マスターにジョッキと硬貨のいくらかを渡しています。 彼自身のパスタを持って、こちらのテーブルを探しているようです。 先ほどはあんなに楽しかったのに、何か急に恥かしくなって 今は何故かパケットを見る事が出来ずに、下を向いていると  アリアナが突然。 「パケット!こっちだよ!」 「ああ、アリアナ。今日、私の演奏を最高に盛り上げてくれた こちらのお嬢さんは、どちらの方かい?初めてお会いすると思うけど。」 「あたしの友達のディルだよ。」 「そうか、じゃあアリアナにとって最初の友達というわけだね。」  え? 「改めて初めまして。アリアナの兄のパケットです。 今後もどうぞ、宜しくね。」  は、はい。 「おや?お嬢さん方のグラスが空じゃないか。 しかも3個もあるし。」  アリアナが、待ってましたとばかりに、私の横の席に置いたバスケットから 例のワインを引き抜くと、3つのグラスに注ぎながら言いました。 「酒は呑む為にあるんだよ。」  その夜は帰宅してから、見張りの者に告げ口されたのか かなり厳しく叱られました。酔っていたのが更に悪かったのです。 当分、外出禁止と言われてしまいました。  もう、パケットやアリアナに会えないかと考えると。絶望的です。 黒猫のトリックに話して、心の支えを取って貰おうと思ったのです。 トリックは情けないなぁ。という感じで言いました。 「王女だからって、猫に頼ってばかりじゃ駄目なんだけどなぁ。
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