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その隙に和泉は素早く羅刹達に近寄ると手刀を首筋に落として行った。
少女に駆け寄ると少女も気絶をしていた。
『あぁ・・・やっと会えたね。葵。』
そう、少女は葵だった。梓と瓜二つの顔立ちだから、和泉はすぐに分かった。
和泉は優しく葵を抱き上げると屋敷に向かって歩き始めようとした。
「待て。」
和泉の背中に刀が押し付けられていた。
『・・・物騒な物押し付けないで欲しいんだけど。』
「あぁ、斎藤君こんな時に限って仕事が早いよね。」
「俺は務めを果たすべく動いたまでだ・・・」
「そのまま、ゆっくり後ろを向け。」
和泉は声の主の言うとおりにすると、三人の男が刀を構えて此方をじっと睨んでいた。
羅刹と同じ浅葱色の羽織。新選組だった。
和泉は溜息を吐いた。新選組の追っ手が来る前に退散しようと思ってたのだ。
『・・・何か用?僕もう帰りたいんだけど。』
「こいつ達をやったのはお前か?」
髪を高く結っている美丈夫が和泉に問いかけた。
『浪士は君らの仲間がやったよ。・・・僕は君の仲間だけやったね。』
「・・・屯所まで来てもらおう。」
『どうしても?』
「どうしてもだ。」
「土方さん、此方は二名気絶。浪士は一人息があります。」
斎藤と呼ばれていた男が土方という男に報告した。
「・・・本当なのか?」
土方という男の顔色が変わった。
「はい。」
・・・事態が悪化したような気がする。
「ますます、怪しいな。屯所に連れていく。」
『そんな、理不尽な。』
「あれ?土方さん始末しなくてもいいんですか?」
さっきから傍観していた男が喋った。
「処遇は帰ってから決める。」
「・・・運のない奴らだ。」
和泉は屯所に連れて行かれた。途中、抱きかかえている葵を取られかけたが、断固として断った。
新選組の方も手が塞がっている方がよいと考えたのか、そのままにしてくれた。
梓、暫く帰れないかも・・・・。
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