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「あ・・・・!」
「殺しちゃいましょうよ。口封じするならそれが一番じゃないですか?」
そう言った総司は瞬時に身を固くして刀に手をやった。
『この子に手を出すのは私が許さぬ!』
和泉は総司だけに殺気を集中させていた。
その場にいた人間は分からなかった。和泉と葵はたまたま居合わせただけのはずだ。何故そこまでして和泉は葵を庇うのだろうか。
『第一、此方の事情も聞かず、殺すのは如何なものだと思うが?』
和泉は総司から目線を外すと土方を見た。
「・・・小さい方から話せ。」
葵が話は、下の内容だった。
半月ほど前、江戸で蘭方医をしている父が仕事で暫く京に行くことになり父の文は毎日のように届いていたが早一月前突然連絡が途絶えてしまったらしい。
居ても立っても居られなくなった葵は京まで旅して探して来たとのことだった。
和泉は精霊達から聞いてたので、大して反応は示さなかった。勿論、秋彦の行動も把握済みだ。
「父の行方は一向に知れず途方にくれていたところを襲われたというわけです。」
「そうか・・・父上を捜しにはるばる江戸から・・・大変だったなぁ」
近藤が考え深げに言った。
「年端もいかねぇ小娘が男に身をやつしていたのはそういう理由か」
土方が納得したように呟いた。
「何・・・小娘?」
その場主に新選組側が固まった。
「・・・申し遅れました。私、鬼柳 葵と言います。」
「ウソだろ・・・」
平助と言われていた男は呆然としている。
今までずっと黙っていた山南と言われていた男がが口を開いた。
「貴女の父上が江戸で蘭方医をしていると言いましたよね。」
「山南君・・・?」
山南が畳み掛けるように千鶴に尋ねた。
「もうしかして鬼柳 秋彦氏ですか?」
千鶴が顔色を変えた。
「父をご存知なんですか!?」
今度は新選組側が顔色を変える番だった。
「秋彦さんの娘さんだと・・・?おまえどこまで知っている?」
土方の目が細くなった。
「どこまでって・・・?」
「とぼけるな!秋彦さんのことだ!」
土方が千鶴に怒鳴った。
「どういうことですか?まさか父に何かあったんですか?」
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