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嘉永7年五月
『ここは、どこだろう?』
次に目が覚めると、森の中だった。空を見上げると、月がちょうど真ん中に見えるから、真夜中ぐらいかな?
キャアアアア
なんか、悲鳴が聞こえてくる。声がした方向をみると、里が燃えているみたいだった。
神様がここに落としたってことは助けた方がいいのかな?
取り敢えずいってみよう。
里の中に入ると、ほとんど死んでいるのは鬼たちばかりだった。
そうか、ここは鬼の里なのか。ということは、襲ったのは人間だな。
一人ぐらい生き残りは居るかもしれない。
和泉は、一番大きな建物中に入ると、人が二人倒れていた。
『おい!大丈夫?意識はあるか?しっかり!?何があった!?』
男の方はもう死んでいた。女の方は辛うじてまだ死んでいなかったので、抱き上げた。
「・・・貴方は、人間か?まだ、我らを襲う気なのか?いや、人間ではないな?」
『いや、私は九尾の狐の和泉だ。』
ばれたら、仕方ないか。
和泉は、変幻を解いた。
黒髪は銀髪に、黒目は金色に、そして、耳が生え、九本の尻尾が生えた。
「九尾の狐!?・・・なら、お願いがあります。私達の子供の双子、鬼柳 葵と梓が今ここから逃げている最中なのです。里の者は、人間達の足止めになるよう、戦ってくれましたが長くは持たないでしょう。
どうか、葵と梓を助けて欲しいのです。お願い、です・・・」
そう女鬼は言うと、生き耐えてしまった。
『まだ、返事返してないんだけど・・・後で、供養はするからね!』
私は女鬼を静かに降ろすと、森の中に走り出した。
やっぱり、変幻を解いて本来の姿でいるのは気持ちがいい。
双子って言ってたな・・・人間の追っ手を見つけた方が早いか?
暫く森の中を走っていると、集団を見つけた。様子を伺うために木陰から見てると、人間の中に一人男鬼がいた。
「お前のお陰で、助かった。鬼柳の者たちはお前以外全滅した。礼を言うぞ。」
人間の一人が男鬼に話し掛けた。
「いえいえ、それで落変水の研究に携わることは可能でしょうか?」
「あぁ。幕府にそう申請をしておこう。」
あの男鬼がこの里を売ったのか。普通、鬼の里は人間が入り込めないように、結界が貼ってある筈だ。大方、あの男鬼が手引きしたのだろう。
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