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和泉と梓は一旦家に戻った。
和泉は梓に全てを話した。
未来から来たこと。神様に会って転生してもらったこと。九尾の狐だということ。精霊達と仲がいいこと。
「その、精霊っていうのは?」
『あぁ、これだよ。』
和泉が家から梓を連れて出ると、梓の手を握った。
「これは!?」
梓の目には、たくさんの生き物が写っていた。和泉の周りを取り囲むように精霊達がたくさんいる。
特に目を引いたのが、龍達だ。
青・赤・黄・白・黒の鱗を持っていて淡く光っていて、和泉の体に寄り添うようにくっついていた。
『おや、今日はお前達も来たのか。』
和泉は龍達の体を撫でながら、梓に説明した。
『梓、精霊達だよ。皆、私と仲良くしてくれている。私は特異体質らしくてね。精霊達が見えるのはありえないらしい。梓の事も随分手伝ってもらった。』
「そうだったんですね。感謝しなければいけませんね。・・・あの、和泉さんは女ですよね?」
『あぁ。そうだが?』
「では、何故着流しなどを、着ているのですか?」
『女物はめんどくさいんだ。着流しが一番楽だからね。それに、この時代は男でいた方が何かと便利だ。』
幕末は男尊女卑の思考が多い。
『それより、梓これからどうする?私と一緒にくるか?それとも、鬼の一族の所で過ごすか?お前はまだ幼い。守ってもらわなければならない。鬼の一族の所に行くというならば、私が責任を持って送り届けよう。』
「・・・葵はどうなりましたか?」
『・・・葵ちゃんは、秋彦の元で暮らしている。』
「どうして?秋彦さんも生きていたの!?」
『葵ちゃんは記憶をなくしているらしい。・・・鬼柳家のことは全て覚えていない。あの夜も。』
薫は嫌な予感がした。
「じゃあ・・・・・」
『梓の事も忘れている。秋彦を父と思い、医者の娘だと思っている。』
葵は泣き崩れた。今まで、自分は梓の事を忘れた日はなかったのに、葵は自分の事を忘れて暮らしているなんて思ってもみなかったのだ。
『葵を責めてやるな。鬼でも、余りに辛い出来事が起こると、心が壊れないように自然と記憶を無意識に拒むのだ。葵にとってそれだけ耐え難い事だったのだろう。』
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