第1章

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 でかいキャベツを撫でているが、どう食おうか迷っている。 調理は苦手だから、当然上手でもないのでアイデアもない。 不恰好に、丼にドカンと丸ごとキャベツがある。  触れば湿った感じが涼しい。 このまま塩で丸齧りしてもいいとおも思っている。  すこし端っこを毟る。 ベリリと破ける感じがした。 実際には経験がないが、脳髄とは こういう感触とは違うのだろう。 そういう心持がある。  口要れば香ばしく歯ごたえもよいので、 塩をふることも必要ない気がする。 そうは思っても丸ごとである。  でかいのだ。  暑い盛りなので、瓶一杯に冷えた水を汲んで 思い切りと丼に溢れるまでぶっかけてみた。  溢れた。  構う事は無い。 また一枚、むしりとって齧っている。 水とは便利である。 美味い時に美味く、不味い時には被ればよい。  私であってもキャベツであっても 相応に違いなどない。  キッチンは誰だ。 千切りは好きじゃないんだ。  ここには会話など無い。 キャベツは毟られるために、丼でふんぞり返っているし 私は毟り齧る為に、水をぶっかけて ムシャムシャと削っていく。  試しに水ではなく、塩をふるが水が美味い。 でも、存外それは塩の責任ではないのである。  暑さのせいでもあるが、 何よりも丼が小さいのだ。  器が小さい事は便利なのだ。 大は小を兼ねるとしても、小には小の使い心地があり グラスから零れて、受ける皿の酒を杯宜しく干すのも一興。 酒であれ、何であれ、キャベツであれ。  まぁ、そういう夏もあるし、そういう夏もあったんだ。 したたかに、溜め込む季節の始まりであろう。 各々方、お急ぎ召されるがよい。 夏はまばたきの間に終る。  キャベツはまだ充分、丸いので 食い残しをしない事も、使命だから。 でもまぁ、すぐ食えるさ。  そうして夏は過ぎ去る。 春は青いが、夏は水色であってくれたら。 毎年、そう想っているんだ。  草々。
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