第1章

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 絵は音楽や演劇、映画と違って瞬間的な印象能力がある。 同時に、生涯を一枚の絵に没頭する事も可能な無限の引力もある。 →  君は未来というモノと仮定しておこうか。 そこに何を期待するかね?  無論、数分後や数年後という話ではない。 過去記録に残すだけの表面的か水面下か、どちらでもよい。 つまりは分岐点を跨ぐ様な、その後における未来だ。  単純に考えてくれ。  一般道路から、高速道路へ移動する為の 段差とそれほど違うわけではない。 そんな認識でも構わないし。 遥かに自由自在に捉えてくれてもいい。 ← ***「私は絵を描きます」*** →  そうか。ならばどれもまた好かろう。 問題はだ、君が最も危険な人物であり 絵筆のスキルから、大きなインパクトを決定できる女性だ。 ← *** 水をグラスに注ぐ音がする。 *** *** 間違いなく水だ。 *** *** 不純物を溶かした、濁りを聞き間違えたりしない。 *** →  幸か不幸か、私は片方が義眼でね。 無論、どちらの眼なのかは、目隠しで拘束されている君には 判別できないと思う。この考えは合っているだろうか? 不都合が無ければ、君の不自由に対する極僅かな謝罪として 水を一杯、贈らせて頂きたいのだが。 ご返答を願えるかね? ← *** 水は水彩に利用したい。 *** *** 私の抵抗はそこにだけある。 *** ***→  義眼という情報も疑わしいし、この部屋に私以外の 別な人物がいるかどうかも怪しい。 声のトーンで男性だと判断しているけれど。 目隠しだけで気配を感じさせるなど、容易い。 私は視覚を盗まれた経験がない、従ってこの情報は  実は信用できる。  この部屋、つまりは空間は余り重要ではない。 私が拘束されている事を、認識できるブラフでしかない。 目隠ししていても、室内か屋外位の違いは判る。  とすれば声の主、私を此処へ拉致した人物 又は、そのグループが私に対して接触を試みている。  仮にこの部屋に移動する物体の感覚をイメージさせる為の ダミーが、グラスに水を汲んでいたとしても どこかで私を監視している人物がいるだろう。 正しくは監視していなくても、精査して管理している人間がいる。 ←*** →  かの、著名なレオナルド・ダヴィンチは言ったそうだね。 絵画は究極であり、音楽は実に惜しいと。 それは時間的制約があるからだと。
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