第1章

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 盆暮の風物詩、渋滞で車が先へ進まなくなると 何時間も、むしろ私が運転するようになる遥か前も。  後部座席で、携帯型ゲーム機で妖怪やらモンスターを 血眼になって集めている息子ぐらいに幼かった頃の そんな時分から、ここで先へ進むの待っている気がする。  変わったとすれば、運転席と後部座席くらいだろうか。 変わらないのは目の前の、ナンバープレートだな。  うん。そういえば私も色々コレクションしたと思う。 カードだったか、何かの食玩だったか。 いつのまにか、それが積もり積もって固まって そして今、このように渋滞という罠で 私の車と家族も、コレクションされているのかもしれない。 「ねぇ。お父さん。」  息子がゲームに飽きたのか、後ろから顔をひょっこりだす。 「どうした?トイレか?もう少しだけ我慢できるか? 高速道路じゃないから、コンビニがあれば貸してくれるかもよ。」  息子は私の首の横から細い腕を出して、フロントガラスを指差す。 「うーん。この行列の一番最初はどうなってるの? アイドルの握手会に並んでるんだっけ?」  奇妙な気持ちだ。皮肉なのか本気でそう思っているのか。 「うん、そうだな。じゃあ、駅なんかのエスカレーターで 左の列に乗ってる人達は、ジーっと大人しくしているだろう。 でも右の列は動いてるエスカレーターを、利用して更に歩いて 昇って行くだろう。」  私は左手で斜めに昇って行く、階段をイメージして見せた。 「知ってる。本当はいけないって先生が言ってた。」  少しだけ車を前に出すが、すぐまた停まる。 「そうだな。急ぐ気持ちも判るし、父さんも遅刻しそうな時は つい、右側を昇ってしまうが、左の列の安全を考えないとな。」  それが、握手会と何の関係があるのだろう? そんな気持ちなのか、聞き返された。 「この道も右はどんどん走って行くけど反対方向だよ。 こっちは左の道だから、止まってるの?」  そうじゃない、そうじゃないんだよな。 どうも私は例え話とかが、下手くそなんだなぁ。  車が少し動いた。 切り替えてみようか。 「じゃあ、車を降りて歩いて一番前まで行くとするだろう? すると、一番先頭の車を見つけられると思うかい?」  息子は首を肩ごと乗り出してきて、先の方までズラっと続く テイルランプを見つめながら言った。 「先頭なんてあるの?ずーっと真っ赤だよ。でも
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!