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一気に階段を登り俺達三人は無我夢中で走った。ゴールは目の前。
チャィムが鳴り終わる15秒が勝負だ。
「うおおおおっ!!」
カーンコーン…ガラッ
「セーフ!!!!」
「そんなわけないでしょう。アウトですよ」
切れ長の目に冷ややかな感じが定着している。テンパーの髪がよりオシャレさを出している男の名は村越英知。長身でスラッとした体系が特徴的だ。
まさかの副担任かよ!
俺の皆勤賞の夢はここで儚く散ってしまった。側では亀島と王富がじだんだを踏んでいる。
「この数式の場合はXがー…」
村越のやつ、見逃すとか広い心をもっていないのだろうが。しかし今日は災難すぎる。同情してほしいくらいだ。
ぼーっと授業を聞いてると消しゴムが転がってきた。俺はダルそうにその消しゴムを手に取る。
「ありがとう。」
小声なのによくとおるその声の持ち主に視線を向ける。
俺の席斜め左にいる安由香里だ。
前髪をピンで留め、両サイドの髪を耳にかけている。セミロングで茶色が少し混ざった色合いの髪は変わらず綺麗だ。
特徴的な一重瞼の大きな目は黒目がちで今にも俺を吸い込んでしまいそうである。
「前前!」
更に小声で前を向くように安は黒板を指さした。俺は慌てて前を向いた。
よかった。村越はそんな俺に気付かず黒板に数式を並べていた。
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