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「まあ、百パーセント嘘でもないし情報はちゃんと流したよ。これで一先ず落ち着けたらいいね」
「よく言うわ、情報を流したって言っても結局は落ちぶれた情報屋にリークして間接的に流させただけじゃない。それで自分だけは情報料を取るんだから悪どいわよね」
「やだなあ、きちんと彼には汚名返上の機会を与えたじゃない。むしろ正当な報酬だよ。僕達は慈善事業じゃないんだから、自分の保身も考えなきゃね」
マリアさんが呆れたように言うと、シグさんは肩を竦めて皿に残っていたケーキの最後の一欠片を口に放り込み、もぐもぐと咀嚼する。
「それじゃ、用も済んだし僕はもう帰るよ。おやすみ~」
「おやすみなさい、シグさん」
そしておもむろに椅子から立ち上がると、そう言いながら後ろ手で手を振り、俺の言葉を背にしながら店から足早に去っていった。
「もう……ゴメンね、ライト君。あの子もあの子で信条があるみたいだから、理解してくれとは言わないけど、気にしないでくれると嬉しいわ」
「はは……別に気にしてませんよ。」
ああいった手合いは近付き過ぎると後々痛い目を見るタイプの人だ。
むしろ、利用して利用される程度の関係の方が何かと気楽でいいものだろう。
「でもよかったの……?私も断片的にしか聞いてないけど、随分大事な情報と引き換えにルナの居場所を聞いたんでしょ?」
「よかったも何も、あの時用意出来る対価がそれくらいしか無かったですし……」
「無かったし?」
「……ルナよりも大切な秘密なんて持ち合わせてませんから、結果としてルナを助けられたなら本望です」
何度も言った言葉だが、半分テンパりながら言った先刻とは違い冷静な今言うのになんとなく気恥ずかしさを覚えマリアさんの耳に口を寄せ、声を潜めて耳元に囁く。
するとマリアさんは「まっ!」と謎のリアクションを残し、ニヤニヤと口元にイヤらしい笑みを浮かべながら俺と一人ハブられ何事かよく分かっていないルナの間で視線を何度か往復させる。
「ふぅ~~~ん。そっか、なら良かったわ。うん」
「はぁ……?」
「まあ、気にしない気にしない。ほら、あなた達明日も学校なんでしょ?そろそろ落ちないと本格的に学校に響くわよ」
「げっ……!弁当も作らないとなのに……!二人とも、おやすみなさい!」
マリアさんに追い立てられるように、俺達は慌ただしくログアウトした。
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