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「……ちゃん……雷ちゃん、起きて、朝だよ」
「ん………」
心地よい微睡みの中、不快感を感じさせない程度に体を揺すられ意識がぼんやりと覚醒を始める。
「ふあ……」
「おはよう、雷ちゃん。今日は随分熟睡してたね」
「姉さん……?今何時………」
目が覚め、次第に意識がはっきりとしてくると目の前に姉さんの顔があり、ふと枕元の時計を見やる。
すると、そこに表示されていた現在時刻は、午前七時半。
「やばっ……!朝ご飯と弁当……!」
「おっと、大丈夫だから、ちょっと落ちつこっか」
弁当を作ったりなんだりするには明らかに寝坊の時間に目が覚めたことに焦り、ベッドから飛び出そうとすると突然姉さんにパジャマ代わりのジャージの襟首を掴まれ、強制的に制止させられる。
「朝ご飯とお弁当だったらちゃんと作ってあるから大丈夫だよ。取り敢えず着替えたらどうかな?」
「あ、うん。ありがとう姉さん。じゃあ着替えるから、取り敢えず部屋から出てってくれるかな」
にかやかに言われ、感謝しつつも部屋に残って着替えを鑑賞する気満々の姉さんを追い出し、念の為鍵をかけるとジャージを脱ぎ捨て、薄手の半袖シャツを着る。
そしてハンガーにかけておいた灰地に黒の千鳥模様のスラックスを引き寄せ、黒いベルトを通すと両足に通して腰の辺りでしっかりとベルトを締める。
そして紺色のネクタイを手に取ると、首に回して締めたところで取り敢えず朝食をとろうと階段を降りてリビングへと向かう。
「ん、今日はトーストとベーコンエッグか」
「うん、どっちかって言うと朝は簡単な方がいいでしょ?」
軽く洗顔を済ませテーブルに着くと、こんがり黄金色に焼けたトーストが二切れと、まだ焼いたばかりなのであろう、時々ぱちぱちと油を弾けさせるベーコンエッグが食卓に並んでいた。
確かに言葉のように簡単なものだが、俺も姉さんも朝はそんなにガッツリ食べるタイプではないので、こういう朝食はありがたい。
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