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船を降りると、俺はその島の大きさに驚いて息を飲んだ。
暁学園は、東京湾から沖へ出て行った先の、時島という島にあった。ここは学園都市になっていて、他にも中学校や小学校、大学もある。
ただ、普通と違うのが、その生徒が全て新人類だということだ。
左右を見ると、船が着いた港を含め、綺麗な白い砂浜がずっと続いている。
砂浜の先の森は切り拓かれ、左側には沢山の建物が密集して建っている区域がある。あの何処かに暁学園があるのだろう。
右側に行くにつれ建物は減り、民家がぽつぽつとある他はまだ開拓されていない森が広がっていた。
後ろを振り返ると、船が船着場を離れるところだった。
とうとう来てしまったんだな……。
親は、最初は混乱していた。今までなんの変化もなかった俺のことだから、驚くのも無理はない。
それより心配なのは、隼人の方だった。
あの日、転校のことを話したら突然走り出して、戻ってきた隼人はひどく疲れた顔をしていた。
隼人に何も言わずに決めてしまったから、絶対に怒られるだろうと思っていたのに、帰り道どこか切ない顔で、頑張ってこいよ、なんて言うもんだから、俺はもう何も言えなくなってしまった。
春休みも何回か遊んだけど、転校の話は一度もしなかった。
毎日連絡するよ、そう言って別れた。
「はぁ……心配だな………」
隼人はモテる上に女癖が悪い。俺と一緒にいる時はそんなことないんだけど、中2と高1で大げんかした時、一緒にいなかった時があった。その時は酷くて、仲直りした後も後処理に追われていたっけ。
今も、そんなことしてないといいんだけど。
プップッと、クラクションの音がした。学校へ向かう送迎バスが、いくら待っても乗り込まない俺に合図したようだ。
俺はいそいそとバスに乗る。
俺一人だけを乗せたバスが、学校に向かって走り出した。
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