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「あの……俺」
「ちょ、ス、ストップ!」
俺が近寄ろうとすると、先生は口を覆ってない方の手を突き出して慌てる。
「し、支給されたネックレス、着けてないならまずつけて!」
「へ?」
ネックレス?
そういえば、届いた様々な資料の中に、変なネックレスみたいなのが入っていたっけ。チャームはなく、ただのチェーンみたいなもので、入学祝いの何かだと思っていたけど…。
「俺、ああいうの着けるタイプじゃないから……」
「いいからつけて!理由は後で話すから」
先生があまりにも必死なので、俺は渋々鞄の中からそれを取り出すと、首につけた。
「はぁ……びっくりした………」
俺がそれをつけたのを確認すると、先生は椅子に座ったままゆるゆると戻ってきた。
さっきは毛布に隠れて分からなかったけど、結城先生はスウェットを着ていた。良いのかな、職場でスウェットなんて…。
「話は聞いてたけど…こんなに威力あるなんて……」
先生は、まだブツブツと何かを言っていた。
俺は机に戻ってきた先生に問いかける。
「あの俺、何かしました?」
「ううん、違うんだ。…えっと、………後で話すよ」
先生は、コホンと咳払いをすると、続ける。
「今からホームルームだから、そこで自己紹介を宜しくね。簡単でいいからねー」
「は、はい」
なんだかわちゃわちゃしたけれど、優しそうな先生でよかった。
髪は寝癖でボサボサだし、眼鏡ダサいし、スウェットだけど……。
「じゃあ、行こうかー」
先生がそう言って立ち上がる。途端に、俺は先生の高身長にビビる。
え、高くない……?
椅子に座ってて分からなかったけど、先生はひょろっと細長くて、今にも天井に頭が着いてしまうんではないかと言うぐらいだ。
スウェットも、ダボダボしている割に丈が足りていなくて、くるぶしから脛の真ん中あたりまで剥き出しになっている。
「着いてきてねー」
俺はびっくりしたまま、先生の後を慌てて追いかけた。
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