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寮は、教室棟から続く連絡通路の先にあるという。
先生と並んで歩き始めた俺は、早速疑問に思っていることを質問した。
「あの、先生。ここって男子校なんですか?」
クラスにも、廊下を歩く生徒にも、女の子が見当たらないのだ。
すると先生は、びっくりしたように俺を見つめた。
「もちろんだよ?だって、新人類は男しかいないでしょ」
そ、そうだった……!
新人類は、Y染色体に突然変異を持った人間のことだ。だから、新人類のための学校であるここは必然的に男子校になるんだ。
自分の馬鹿さ加減に恥ずかしくなっていると、結城先生は追い打ちをかけるように言う。
「ここだけじゃなくて、この島には男しかいないよー」
な……!
いくらなんでもむさ苦しすぎる……。
先生が心配そうに見守る中、俺は少しの間感傷に浸っていた。
「あ、そういえば先生」
すこし落ち着いた後、俺は朝のことを思い出して先生に言う。
「このネックレス、一体なんなんですか?」
「あぁ、それね」
先生はそう言うと、すこし言いにくそう切り出した。
「僕達と君を守るもの、とでも言ったらいいかなぁ?」
「??」
このネックレス、そんなたいそうな物なんだろうか。お守りみたいな?
「公開はされていないんだけど、実は僕達新人類は、君達現人類の出すフェロモンに弱いんだ」
「…は?」
俺は、思わず声に出してしまった。
ナニソレドーユーコト?
フェロモンって、あのフェロモン?
先生を見ると、すこし恥ずかしいのか耳の先がほんのり赤くなっている。
「だっ、だから、それ必ず付けてないと、危ないからね、分かった?」
朝の先生の反応、じゃああれは……。
思い返すと、こっちの方が恥ずかしくなって、俺まで赤面してしまった。
しばらく無言で歩く。
学生寮棟について、先生はエレベーターのボタンを押した。
エレベーターはすぐ来て、俺たちは乗り込む。
「君の部屋は、603号室。最上階ね、はい、これカードキー」
先生が言って、カードを渡してくれる。黒いそのカードの隅には、シラカワユキと片仮名で俺の名前が刻印されてあった。
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