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チン、と音がして、エレベーターが止まる。
扉が開くと、まるでホテルのように綺麗な廊下が続いて居て、俺は目を丸くした。
「すご……」
「あ、一つ言い忘れてた」
先生はそう言うと、気の毒そうな表情を浮かべ、頭をポリポリとかいた。
「君の同室の子なんだけど、ちょっと…変わってるかもしれないから、気をつけてね」
「え?」
「じゃあ、僕はこれで。明日から、早速授業あるから、宜しくね」
先生はそう言うと、再びエレベーターに乗って帰って行ってしまった。
ポツンと1人取り残される俺。しばらくぼーっとして、それから慌てて603号室を探す。
603号室はすぐに見つかった。扉の横の機械にカードキーを差し込むと、カチャリ、と鍵の外れる小気味良い音がした。
「失礼……します…」
そろりと部屋に入る。
そして、その大きさに驚く。
これ、寮って規模じゃない!
入ってすぐ玄関があり、その先には廊下と、そしてリビングが続いていた。リビングの先にはキッチンもあって、料理がちゃんと出来るようになっている。
手前の廊下には、4つの扉があった。そのうちの2つはトイレ、そしてお風呂場だろう。
「もしかして、個室?!」
同室の人がいるとは聞いていたけれど、まさか個室が与えられるとは思っても見なかった。
俺は、ウキウキしながら靴を脱いだ。俺の部屋、どこだろう。同室の人もまだ帰ってないみたいだし、扉とか、勝手に開けても大丈夫だよね。
この時、ちゃんと見ていれば、玄関に俺のじゃない、脱ぎ捨てた2人分の靴があるのに気づいたのに……。
手始めにと一番手前の扉を開けた。トイレだった。
次に、向かいの扉を開ける。こちらはお風呂。
次の部屋こそは、俺の部屋かな、と思って扉を開けた途端、俺は愕然とした。
良い感じの照明の中、ベッドの上で男が男に襲われていた。しかも素っ裸で。
上にまたがっていた男が俺の方を振り返った。
目と目が合う。
その途端、固まってた俺の身体が再び動き出した。
「たっ、大変失礼しましたぁ!!!」
流れるような動きで、俺はその部屋の扉を閉めた。そしてダッシュで向かいの扉を開けて、中に滑り込む。
バタン、と扉を閉めると、その場で俺はしゃがみこんだ。
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