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「もしかして君……柊 瑞樹?」
柊瑞樹は、今超人気のアイドル声優だ。
あまりアニメとかに詳しくない俺でも知っているぐらいだから、相当人気だと思う。
コンビニに置いてある雑誌を見ても、何処かには必ず載っている。
彼は確か、俺の一個年下だったはず。ということは、高1か。
「そうだけど」
初めて芸能人を生で見た俺は、相当キラキラした目で彼を見て居たのだろう。柊君はうっとうしそうな表情を向けて来た。
それにしても、柊瑞樹って、新人類だったんだ…。
そして途端に、さっき向かいの部屋で見たことを思い出した。
超売れっ子声優がホモだって知られたら、不味いんじゃないの??
「あ、あのさっ、さっきの事なんだけど!」
絶対に言わないから、と言おうとした俺を阻むようにして柊君が口を開いた。
「さっきの事…?あぁ……」
柊君の口角が、くいっと上がった。
途端に、表情が変わる。舐めるような目つきで、俺を見下ろした。
「先輩も、俺とああいうこと、したいの?」
「え、あ、え」
どーゆーことですか?!
突然のことに、俺は言葉に詰まる。
柊君の声が、耳から侵入して脳みそをかき混ぜているみたいな錯覚に陥って、俺は何も考えられなくなった。
柊君は、どんどん近づいてくる。反射的に後退るのに、何故か力が入らなくなって俺はへにゃへにゃと床に崩れた。
ちょ、待って、何これ。
柊君が、俺に顔を近づける。
そして俺の耳元で囁く。
「先輩、初めてみたいだから優しくしてあげる」
待って待って待って。
「ちょ、あ……ぅ……」
完全にからかわれているのに、柊君が何か言う度に思考がぼーっとしてしまう。力も入らなくて、逃げることすら出来ない。
俺は涙目になりながら、必死で願った。
誰か助けーーー
ピンポーン
その時、突然チャイムの音が部屋中に響いた。
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