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そろりと扉を開ける。
その瞬間、職員室の方からぬらりと背の高い誰かが出て来て、俺はその人と正面衝突した。
まさかっ、リョウ先生?!
「ひっ、ごめ、ごめんなさ」
「わぁー!白川君、大丈夫?!ごめんね!!」
俺の謝罪の言葉は、ひどく慌てた優しい声にかき消された。
「あ……結城先生?」
優斗を見ると、優斗もホッとしている表情だった。俺も、胸を撫で下ろす。
「ご、ごめんねぇー白川君。怪我ない?」
「だ、大丈夫です!」
「よかった、結城センセー。もうリョウ先生はいないんすね??」
優斗がそう言うと、結城先生は困った表情を浮かべた。
「君達、どうしたの?もしかして……リョウが迷惑かけた??」
リョウ、と呼び捨てにしているところからすると、リョウ先生は、結城先生の後輩なんだろうか。凄く申し訳なさそうに、結城先生はペコペコと頭を下げる。
「ん、大丈夫だよセンセー。ちょっと職員室こいって言われただけだから」
結城先生の眼鏡の奥の目がうるうるしている。あんな後輩を持つと、やっぱり大変なんだろうか。
「あ……ちょっと待って」
結城先生は涙目になりながらそう言うと、自分の机に向かい何やらガサゴソやり始めた。
「これ……多分リョウから君達への罰」
はい、と申し訳なさそうに結城先生が渡すのは、ホチキスどめされた、なんだか分厚い冊子。
「これ…次までに解いて来い……ってことだと思う」
俺達はそれを受け取る。結構な厚さだぞ?これ。
げんなりしながら冊子をカバンに入れようとした時、俺の指に痛みが走った。
「いっ……つ」
「悠希?どうした?」
見ると、指先から血がぷくーっと出ている。冊子のホチキスがちゃんととまっていなくて、針が突き出たままだったみたいだ。
「わ!白川君大丈夫?!」
つぅ、と、血が指を伝って流れ始めた。意外に深く刺しちゃったかも。
「保健室、行くか?」
優斗がそう言ってくれた時、予鈴がなった。
「いいよ、授業始まるし、俺、1人で行けるから」
「本当か?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
優斗は心配そうにしてたけど、こんな程度の傷でついて来てもらうのも申し訳ない。
俺は、消毒し終わったらすぐ授業戻るから、と言い残して、1人で保健室に向かった。
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