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全ての傷にガーゼをあてがい終わると、俺は安堵のため息をついた。
時計を見ると、終業の10分前だった。なんだかんだで、授業に出ずに終わってしまった。優斗は心配しているだろうか。
と、布がこすれる音がして、俺は驚いてベッドを見る。
ヤンキーさんが、目を覚ましていた。
「…………てぇ……」
「あっ、あの、安静にした方が……」
起き上がろうとするヤンキーさんを、反射的に止める。すると、案の定ギロリと睨みつけられた。
「指図されんのは大嫌いなんだよ、黙れ」
上半身を起こしたヤンキーさんは、それから何か違和感を覚えたらしく、額に手をやる。
そこには、俺が不器用ながらにも貼り付けたガーゼ。
再び、激しい視線を向けてくる。
「何勝手なことしてくれてんだ、あ?」
ひぃいいい!
俺が声にならない悲鳴をあげていると、ヤンキーさんは大きく舌打ちした。
「おい、水」
「は、へっ!」
「3秒以内に水持ってこい」
俺は涙目で頷くと、ぎくしゃくしながら戸棚のコップに冷蔵庫に入っていた水をつぐ。
それをヤンキーさんの所へ持って行きながら、俺は思う。
なんだこの状況…。
何やってんだ俺………。
「遅ぇよ」
ヤンキーさんは俺の手からコップをひったくると、ぐい、と一気に飲み干す。
空になったコップを俺に押し付けると、制服のポケットをガサガサとまさぐり始めた。
「………」
取り出したのは、タバコの箱とライター。慣れた手つきで箱からタバコを一本取り出すと口にくわえ、ライターで火をつけようとした。
タバコ!
未成年者の喫煙、ダメ、絶対!
考えるより先に体が動き、俺は反射的にヤンキーさんの手からタバコを取り上げていた。
ばぁーーか!!
何やってんだよ俺ぇええ!!
「タ、タバコは………」
ベッドから殺気が立ち昇っているのを感じる。俺は、恐ろしくてそっちを見ることが出来ない。
「タバコはダメですよ……はは…」
「……………」
「…………………」
いたたまれない沈黙の後、俺の耳が、ふん、と鼻で笑うような声を聞いた。
え?…笑っ……?
ギリギリと首をヤンキーさんの方へ向ける。
ヤンキーさんが俺の方を見て、極悪面でニヤリと笑っていた。
!!
嫌な予感しかしない…!
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